
「外国人採用を進めたいが、彼らの住む場所はどうすれば…?」 人手不足解消の切り札として外国人材に注目が集まる一方、多くの企業が住居確保の壁に直面しています。言語の壁や保証人の問題で、個人での部屋探しは困難を極めるのが実情です。
そんな中、北九州市が企業と連携し、市営住宅を活用する画期的な取り組みを開始しました。この記事では、この最新事例を元に、企業ができる住居サポートの具体的な方法と、採用を成功に導くためのヒントを解説します。本日のトピックはこちら!
・外国人採用で企業が直面する「住居確保」というリアル
・北九州市の最新事例から、自治体と連携した具体的な解決策
・外国人材を受け入れる際の、住環境サポートの選択肢とヒント
なぜ進まない?外国人採用で企業が直面する「住居の壁」
外国人採用を進める上で、スキルや経験、日本語能力といった業務面の確認はもちろん重要です。しかし、それと同時に見過ごされがちなのが「住居の確保」という大きな壁です。
人材が見つかっても、日本での生活基盤となる住まいがなければ、安心して働いてもらうことはできません。特に初めて来日する人材にとって、自力で家を借りるのは非常に困難です。「住居は個人で探してもらう」というスタンスでは、結果的に貴重な採用機会を逃してしまう可能性も少なくありません。採用活動において、住居サポートはもはや無視できない重要な要素となっています。

【朗報】北九州市が外国人材の「住居問題」支援へ
こうした状況の中、福岡県北九州市で、企業と自治体が連携して住居問題を解決する画期的な取り組みが始まりました。
背景にあるのは、地域が抱える深刻な人手不足です。特に同市若松区では外国人技能実習生の雇用が急増しており、区内の外国人居住者数は2022年3月時点の約1000人から、2024年3月には約1900人へと、わずか2年で倍近くに増加しています。しかし、実習生が個人で住居を確保することは難しく、企業の大きな負担となっていました。

そこで市が打ち出したのが、技能実習生を雇用する企業に対し、市営住宅の空き住戸を貸し出すという、福岡県内では初となる試みです。具体的には、エレベーターがなく入居者が集まりにくい5階建て市営住宅の4~5階を、実習生が入居することを前提に企業へ貸し出します。その際、通常の入居に必要な収入要件なども緩和される予定です。
この取り組みは、関係者それぞれに大きなメリットをもたらします。
- 企業:採用した人材の住居を安定的に確保できる
- 外国人材:保証人などの壁に悩むことなく、安心して日本での生活をスタートできる
- 自治体:活用が難しかった市営住宅の空き家を有効活用できる
まさに「三方よし」の仕組みであり、外国人採用における企業の負担を軽減する、先進的なモデルケースと言えるでしょう。
そもそもなぜ外国人は家を借りにくい?2つの理由
今回の北九州市の例に限らず、日本で外国人が家を借りにくい背景には、構造的な問題が存在します。主な理由として、以下の2点が挙げられます。
一つ目は「保証人」の問題です。日本の賃貸契約では、多くの場合「連帯保証人」が求められます。しかし、来日して間もない外国人は、日本に頼れる親族や知人がいないケースがほとんどです。近年は保証会社を利用するのが一般的ですが、その審査においても日本語でのコミュニケーション能力や日本での勤続年数が問われるなど、外国人にとっては依然としてハードルが高いのが実情です。
二つ目は、「文化や習慣の違いへの懸念」です。これは貸主(大家さんや管理会社)側の不安です。例えば、ゴミ出しのルールや騒音に対する考え方、一つの部屋に複数人で住むことへの抵抗感など、過去のトラブル事例やイメージから、入居を敬遠されてしまうケースが後を絶ちません。

企業ができる住居サポート3つの選択肢
自治体の支援はまだ限定的であるため、多くの場合、企業側でのサポートが外国人採用成功のカギを握ります。企業が取りうる具体的な選択肢は、主に3つです。
一つ目は「社宅や寮を用意する」ことです。自社で物件を借り上げる、あるいは所有することで、最もスムーズに住居を提供できます。家賃を給与から天引きできるなど管理がしやすいメリットがある一方、物件の維持管理コストがかかる点がデメリットです。
二つ目は「賃貸契約を全面的に支援する」方法です。企業が契約者となる「法人契約」を結び、従業員である外国人材に貸し出す形です。これにより保証人の問題をクリアできます。物件探しや内見の同行、ライフライン(電気・ガス・水道)の契約サポートまで行えば、従業員の安心感は大きく高まります。
三つ目は、今回の事例のように「自治体の支援制度を活用する」ことです。自社が拠点を置く市区町村で、外国人居住者向けの公営住宅の提供や、家賃補助制度がないかを確認してみましょう。また、地域の国際交流協会などが、住居探しのサポートや多言語での相談窓口を設けている場合もあります。
住居の次は「ビザ手続き」。複雑な申請はプロに相談
無事に住居が見つかっても、外国人採用にはもう一つ大きなハードルがあります。それが「在留資格(ビザ)」に関する手続きです。職種や本人の経歴によって必要な在留資格が異なり、申請書類も非常に複雑です。手続きに不備があると、来日のスケジュールが大幅に遅れてしまう可能性もあります。住居の確保と並行して、ビザに関する専門的な知見も不可欠です。