
「日本で働きたいけれど、言葉の壁が高い」そう感じる外国人材は少なくありません。福岡県で5カ国語に対応する自動車教習所を開校したネパール人経営者の事例は、外国人採用を考える企業にとって大きなヒントになります。なぜ「言葉のハードルを下げる工夫」が人材定着のカギなのか。本記事では具体的な事例をもとに、企業がすぐに活かせるポイントをわかりやすく解説します。
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5カ国語対応の教習所が福岡で開校

開校したのはネパール人経営者
2026年5月14日の毎日新聞によると、福岡県在住のネパール人、カンデール・ジバラルさん(40)が、ネパール語など5カ国語(日本語含む)に対応する自動車教習所「ドリームドライビングスクール」を福岡県遠賀町に開校しました。開校から半年がたち、さまざまな国籍の人たちが各地から通っているとのことです。
教習所は「届け出自動車教習所」(運転免許取得に向けた『教習』だけを行う教習所で、本試験は運転免許試験場で受ける必要がある施設)として運営されています。教習車の助手席に座ったカンデールさんが日本語で「右に曲がってください」と指示し、細かい説明はネパール語で補足する形式です。

教習所開校の背景にある体験
カンデールさん自身が、日本で自動車運転免許を取得する際に大変な苦労を経験したことが、開校の出発点でした。実はネパールはジュネーブ条約(1949年)に加盟していないため、ネパールで取得した運転免許や国際運転免許証は日本では使えません(警察庁および国際免許案内ポータルの情報より)。つまり、ネパール出身の方が日本で運転するには、改めて日本の運転免許を取り直す必要があるのです。
カンデールさんは、自身の経験を生かして「言葉のハードル」を低くすることに力を注ぎました。当事者だからこそ気づける細かい配慮が、教習所の強みになっています。
なぜ「言葉のハードル」が外国人採用の課題なのか

運転免許取得でつまずく外国人材
外国人材が日本で生活・就労するうえで、運転免許の取得は大きなハードルです。理由は次の通りです。
- 学科試験の言語対応にばらつきがある:都道府県によって翻訳対象の言語が異なる
- 実技試験は日本語が基本:指示の理解には一定の日本語力が必要
- 筆記試験の問題文が独特:日本独自の交通ルールや言い回しが多い
埼玉県警の情報によると、学科試験は20言語(ネパール語、ベトナム語、タガログ語など)に対応していますが、地域によって対応言語に差があります。
業務・生活の両面に影響する
「運転免許の壁」は、単なる個人の問題ではありません。地方の製造業・物流業・介護業などでは、移動手段として車が不可欠な職場が多くあります。免許が取れないと通勤や業務に支障が出て、結果的に離職につながることも少なくありません。
厚生労働省「2024年外国人雇用実態調査」(労働政策研究・研修機構の2025年10月号で紹介)によると、外国人労働者の雇用に関する課題で最も多いのは「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」(43.9%)でした。言葉の壁は、採用後の定着にも直結する根深い課題です。

教習所の具体的な取り組み内容

日本語+母国語の二段階指導
ドリームドライビングスクールでは、運転免許試験場での本試験を想定した独自の指導法を取り入れています。
- 基本指示は日本語:本試験で必要な日本語に慣れさせる
- 細かい説明は母国語:理解不足による事故やつまずきを防ぐ
- 5カ国語対応:ネパール語、日本語を含む計5言語で対応
この「当事者の視点で設計されたサービス」が、開校から半年で各地から教習生が集まる人気の理由となっています。
筆記試験対策もきめ細かく
教習所内のプレハブでは、日本人スタッフの柴田英理子さん(42)が筆記テストに向けた学習を指導しています。学科試験は外国語でも受験できますが、専門用語や独特の言い回しを理解するには丁寧なサポートが欠かせません。
コースそばで筆記学習までフォローする一体型の運営は、教習生の合格率を高めるだけでなく、安心感を生んでいます。
外国人採用への3つの示唆
このネパール人経営者の取り組みから、外国人採用を進める企業が学べるポイントは大きく3つあります。
言語サポートが定着率を上げる
厚生労働省の「2024年外国人雇用実態調査」によると、外国人を雇用する理由として「労働力不足の解消・緩和のため」が69.0%(前年比4.2ポイント増)と最多でした。一方で、雇用課題のトップが「日本語能力等のためにコミュニケーションが取りにくい」(43.9%)であることを踏まえると、言語サポートの充実は定着率に直結する投資といえます。
- 業務マニュアルの多言語化(やさしい日本語+母国語の併記)
- 入社時オリエンテーションでの通訳の活用
- 日本語学習の費用補助や社内勉強会の開催
生活面の支援が信頼を生む
仕事のスキルだけでなく、生活面のサポートが外国人材の安心感と帰属意識を高めます。運転免許の取得支援、住居の手配、行政手続きの同行など、「生活の困りごと」に寄り添う姿勢が信頼関係につながります。
特に2025年10月1日には道路交通法施行規則の一部改正により、外国免許の切替手続きの内容が変更されました(警視庁発表)。最新の制度を把握し、必要に応じて情報提供することも企業の役割の一つです。
当事者視点のサービス設計
カンデールさんの教習所が支持される最大の理由は「自分が苦労したからこそ、何が必要かわかる」という当事者視点です。外国人採用においても、現場で働く外国人材の声を聞きながら、福利厚生や教育制度を設計することが定着率向上のカギとなります。

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企業ができる外国人材の支援策
入社後の生活サポート体制
外国人材を採用したあと、企業が整えておきたい支援体制を整理します。
| 支援項目 | 具体的な取り組み例 |
|---|---|
| 住居 | 社宅・寮の用意、賃貸契約の保証人代行 |
| 通勤 | 運転免許取得支援、送迎バスの運行 |
| 言語 | 多言語マニュアル、通訳アプリの導入 |
| 行政手続き | 役所同行、在留資格更新のサポート |
| 健康・医療 | 多言語対応の医療機関リスト提供 |
特に地方の事業所では「車がないと生活できない」ケースが多く、運転免許の取得支援は大きな差別化ポイントになります。教習費用の補助や、5カ国語対応の教習所のような多言語サービスを紹介できる体制を整えておくと、採用競争力が高まります。
在留資格・ビザ手続きの整備
外国人材を雇用するうえで欠かせないのが、在留資格の理解です。
厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」によると、2025年10月末時点の外国人労働者数は257万1,037人と過去最多を更新し、3年連続で10%超の伸びとなっています(2026年1月30日公表)。なかでも「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」など専門的・技術的分野の在留資格を持つ労働者が急増しています。
国籍別ではベトナムが約60万人で最多、次いで中国、フィリピン、ネパール、インドネシア、ミャンマーと続きます。ネパール、ミャンマー、インドネシア、スリランカは前年比25〜42%増と急増しており、南アジア・東南アジア出身者への対応の重要性が増しています。

まとめ:言葉の壁を越える採用へ
ネパール人経営者のカンデールさんが開校した5カ国語対応の自動車教習所は、「言葉のハードルを下げる」という発想がいかに大切かを教えてくれます。これは教習所に限った話ではなく、外国人採用全般に通じる考え方です。
外国人採用は、単に人手不足を埋める手段ではなく、企業の多様性と競争力を高める戦略的な取り組みです。「言葉の壁を低くする」という小さな工夫の積み重ねが、外国人材にとって「ここで働き続けたい」と思える職場をつくります。
参考情報・出典
- 毎日新聞「ネパール人が教習所開校 5カ国語対応で『言葉のハードル低く』」(2026年5月14日/山下智恵記者)
- 厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」(2026年1月30日公表)
- 厚生労働省「2024年外国人雇用実態調査」(労働政策研究・研修機構 ビジネス・レーバー・トレンド2025年10月号より)
- 警察庁「外国の運転免許をお持ちの方」
- 警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには」(令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則)
- 埼玉県「第10章 運転免許(外国人の生活ガイド)」
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