
外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!
・パキスタン人材の特性理解
・採用後の注意点
・宗教・文化の配慮を習得
その実力が評価され、すでに欧米各国で活躍しているパキスタンのIT高度人材。日本でもようやく注目され始めたのをご存知でしょうか。大学や企業がパキスタンの大学と協力し、保健医療や観光などの分野でAI開発やシステム構築を完成させ、目覚ましい成果を挙げています。パキスタン人のシステムエンジニアをフルリモートで採用する企業も登場しました。
今後日本ではIT人材が大きく不足する見通しですが、パキスタンがその助けとなることは確実。大学でITを学ぶ優秀な人材が毎年2万人以上輩出されており、その中には日本で働くことを夢見て日本語を学ぶ若者が大勢います。平均月収が200ドル台のパキスタンから見ると、日本の賃金はとても魅力的。日本側も、優秀なIT人材を比較的安価に確保できるメリットがあります。日本から遠く離れたパキスタンの人々の国民性や仕事観などを理解し、受け入れ態勢を整えましょう。

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パキスタンの基本情報

パキスタンの正式名称はパキスタン・イスラム共和国。南アジアに区分されており、インド、中国、アフガニスタン、イランと国境を接し、アラビア海に面しています。
日本の2倍の国土に、世界第5位の人口が暮らしています。国民の6割以上が30歳未満で平均年齢は20.5歳。若年人口の拡大は今後も40〜50年間続くと予想されています。
項目 | 内容 |
---|---|
国名 | パキスタン・イスラム共和国(Islamic Republic of Pakistan) |
国土 | 79.6万平方キロメートル(日本の約2倍) |
国旗 | 緑色はイスラム教、竿側の白色はイスラム教以外の宗教を象徴。三日月は進歩、星は光と知識を表すイスラム教のシンボル。 |
首都 | イスラマバード |
人口 | 2億4,149万人(2023年、国勢調査) |
民族 | パンジャーブ人、パシュトゥーン人、シンド人、バローチ人等 |
言語 | ウルドゥー語(国語)、英語(公用語) |
宗教 | イスラム教(国教) |
一人当たりGDP | 1,596.7米ドル(2022年、世界銀行) |

パキスタン人材の特徴
優秀な若者が多いため、パキスタン人材には「技能実習生であっても特定技能レベルの人が多い」という特筆すべき特徴があります。日本がパキスタンと技能実習制度に関する覚書を交わしたのは2019年のこと。現在は建設業や農業、機械加工やパン製造などの分野でパキスタンの人材が活躍しています。

令和6年6月末の時点で、日本に在留しているパキスタン人は総数27,642名。そのうち技能実習生は123名、特定技能8名、技術・人文知識・国際業務5,278名です。今後はIT分野などの高度人材が増加する見込みで、パキスタンも国を挙げて日本への人材送り出しに力を入れています。
パキスタン人材は英語が堪能で、日本語の習得にも熱心に取り組みます。自分の専門分野に自信と誇りを持ち、努力を惜しみません。実際にパキスタンのIT人材と仕事をした日本企業は「期待以上の効果があった」と高く評価しました。人懐こく楽しいことが大好きなパキスタン人を採用して「職場が明るくなった」という声もあります。

パキスタンの社会
パキスタンは、宗教や伝統を重んじる保守的な社会と言われています。イスラム教の教えに基づいて生活し、地方では特に女性の社会進出は認められていません。地域格差や教育格差、貧富の差なども大きな問題となっています。
IT産業を国の重要な産業と位置付け、大学教育に力を入れているパキスタンですが、政情不安定なため暴動やテロが多く、インターネットがすぐに遮断されてしまいます。IT技術者はその高い専門性を国内では発揮しづらい状況です。
歴史
パキスタンは、もともとはインドの一部でした。1947年、イギリスの植民地からインドが独立するときにイスラム教の国として分離し、パキスタンが誕生。当初はバングラデシュもパキスタンに含まれていましたが1971年にバングラデシュが独立し、現在の形となりました。

パキスタンにはとても古い歴史があります。50万年前の人骨が発見され、人類発祥のころを知る手がかりの一つとなりました。インダス文明のルーツともいわれる文明があり、モヘンジョダロやハラッパ―遺跡もパキスタンにあります。アリヤン文化やガンダーラ文化など、貴重な歴史遺産も有名です。
宗教
パキスタンは国教をイスラム教と定めています。国民の97%がイスラム教徒で、日常生活はもちろん、政治、法律、教育などにもイスラムの教えが強く影響しています。イスラム教や預言者を冒涜するものは重い罪に問われ、宗教の自由は著しく制限されているのが現状です。
女性は肌の露出を避けた服装が必要で、食事はイスラム教の教えに従って準備されたハラル食品のみを口にします。豚肉は不浄なので食べません。
パキスタンの国民性と仕事観
厳格なイスラム教国であるパキスタンですが、そこで暮らす人々は明るく前向きな人が多いようです。どんな国民性で、仕事に対してどのような価値観を持っているのでしょうか。

国民性
パキスタンの人々は、家族や友人との絆をとても大事にします。親しみやすい性格で、いつも笑顔でいることを心がけます。勤勉で真面目な人が多く、律義。恩を受けたら必ず返そうとするところなど、日本人と似ていると感じるでしょう。
一方、特に男性は、女性や家族を守る気持ちが強いことから自己主張が激しい一面もあります。少し誇張して話をしたり、時間にルーズなこともあると言われています。
仕事観
パキスタンの人々は、家族のために身を粉にして働きます。外国に出稼ぎに行くことも多く、少しでも多く送金しようと頑張ります。社会的に信用されるのは、安定した収入のある公務員や医師、エンジニアなど。
勤勉さや忍耐強さなどが高く評価され、技術や知識を得るための努力を惜しみません。問題が発生しても投げ出さず、あらゆる手を使って何とか解決し帳尻を合わせます。
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パキスタン人と一緒に働くときの注意点
日本とは全く違う文化圏のパキスタンの人々を迎え入れる時、どのような点に注意すべきでしょうか。それぞれの場面で必要な配慮をまとめました。

職場で注意すること
指示を明確にすること。わかりやすく短い文章にしたり、イラストで伝えるようにし、どこまで理解できているか確認しましょう。パキスタンの人々は目上の人や年長者を敬い、よく従います。しかし無表情で威圧的に指示されると壁を感じ萎縮してしまうので、明るく柔らかい表情を心がけてください。
イスラム教の文化を把握しておくことが大切です。1日5回のお祈りを何時に行いたいか、就業時間後でも大丈夫なのか、事前に話し合いましょう。毎年1か月間実施されるラマダン(断食)の期間は、唾さえも飲み込まないイスラム教徒がいます。職場でもできるだけ配慮できると良いでしょう。
宗教的理由で飲酒や豚肉を食べることはタブーです。歓迎会などで無理に飲ませたり、騙して食べさせてはなりません。また、イスラム教を馬鹿にしたり悪く言うのは絶対に避けてください。
パキスタンの人々は少し時間にルーズと感じるかもしれませんが、もともとルールを守る意識が高いため、日本では時間厳守が重要であることを来日時に伝えること。すぐに時間に対するルーズさは修正されるでしょう。
生活で注意すること
日本はパキスタンと生活習慣などが大きく異なります。大きな生活音をたてないこと、水回りの使い方、ゴミの分別の仕方など、来日時にわかりやすく伝えることで余計な摩擦を回避することができるでしょう。パキスタン人が女性の場合は、必ず女性職員が対応すること。時々様子を見に行き、よりそってわからないことや悩みなどを聞くようにしてください。
宗教によって、食べるものに違いがあります。イスラム教徒はイスラム法に則って精肉されたもの(ハラル)を食し、豚肉は口にしません。宗教的にタブーな食べ物を無理強いしないよう注意してください。他国籍や他宗教の実習生と共同生活は可能ですが、調理器具の共有は避けること。野菜や香草などを栽培するスペースがあると喜ばれるでしょう。
日本とパキスタンの関係
日本とパキスタンが国交を樹立したのは1952年。2022年には国交樹立70周年を祝う式典が開かれました。両国は親しい友好関係を維持しています。
1951年のサンフランシスコ講和会議で、パキスタンの外務大臣ザファルラー・カーン氏は「日本の平和は、正義と公正によって維持されなければならず、復讐や反発の気持ちを抱いてはいけない。将来、日本は世界で社会的、政治的な重要な役割を果たすことになるであろう。日本は輝かしい未来を持っている国であり、必ず平和を愛する人々なのだ。」と日本を擁護し、平等に接するように国際社会に呼びかけました。
1960年には交換留学生プログラムと円借款(日本政府による低金利の貸付)が開始されました。日本政府はパキスタンに日本製品を大量に輸出し、支払いも猶予しました。パキスタンにはメイドインジャパンの品物が溢れ、南アジアや中東諸国に日本製品の良さが浸透。輸出拡大のきっかけとなりました。日本にとってパキスタンは地政学的にも重要な国です。パキスタンがソ連のアフガン侵攻を阻止したことで、中東から石油を購入する道が閉ざされずにすみました。
パキスタンへのODA(政府開発援助)
日本政府はパキスタン政府に対し、2021年までの実績で有償資金協力(円借款)8,174.75億円、無償資金協力 2,994.10億円、技術協力654.34億円を拠出しています。インフラ整備、教育、医療、災害対策などに加え、モヘンジョダロ遺跡修復事業協力なども実施しました。
まとめ
政情不安定で治安も悪いパキスタンでは、多くの若者が危険と隣り合わせの生活を強いられています。それでも、日本で働くことを目標に、技術の習得や日本語の勉強に励んでいます。日本にはプログラミングやソフト開発ができる大学生は5%しかいないと言われていますが、パキスタンでは27%。英語が堪能で理数科が得意、そして日本に憧れているパキスタンの若い技術者は数多く存在しているため、安定し継続した人材確保が可能です。
イスラム教はよくわからないのでハードルが高い・・と感じることもあるかと思いますが、一度受け入れてしまえば案外大丈夫なもの。ある企業はパキスタンのIT人材を継続的に雇用しており「イスラム教徒の生活環境を整えるのに不安はあったが、それ以上に素晴らしい成果を得ることができた。今後も積極的にパキスタン人と仕事したい」と感想を述べています。
参考資料
厚生労働省:「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
外務省:パキスタン・イスラム共和国(Islamic Republic of Pakistan)基礎データ
在パキスタン日本大使館:パキスタンを理解するための8つのデータ
JETRO:アジアの労務コスト比較、意外に大きい賃金水準の地域差
法務省:在留外国人の推移
国際人材協力機構:パキスタン人材の概要
在東京パキスタン大使館:交流歴史年表
JETRO:パキスタンのデジタル人材調査報告

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この記事の監修者

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。