費用増に注意!特定技能ミャンマー人材「タイ経由」の危険な落とし穴

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ミャンマー人材の特定技能(特定の分野で働けるビザ)採用で、早く入国できると話題の「タイ経由ルート」。しかし、安易に選ぶと企業や候補者に思わぬトラブルをもたらします。

本記事では、外国人採用の専門家がタイ経由の仕組みや隠れたコスト、企業が負うコンプライアンス上の注意点を解説します。安全な採用のために必読です。この記事を読むことで得られる3つのポイントは以下の通りです。

タイ経由ルートは候補者の費用負担が大きく、入国後のトラブルに繋がりやすい
受入企業のコンプライアンス違反リスクが高まる
・時間がかかっても正規ルートを選ぶべき理由

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ミャンマー人材採用の現状

特定技能制度において、ミャンマー人材は非常に人気の高い層です。真面目で勤勉、協調性があり、日本の職場になじみやすいと評価されており、介護、外食、農業など幅広い分野で外国人採用が進んでいます。

一方で、ミャンマー国内から新たに人材を呼び寄せる場合、近年は手続きの不確実性が大きな課題となっています。ミャンマー国籍の方が特定技能として海外で就労する場合、ミャンマー政府が発行するOWIC(海外労働身分証明カード)の取得が必須です。

現在のミャンマー情勢では、行政手続きの遅延や出国制限、書類取得の難航などにより、予定通りに手続きが進まないケースが多発しています。企業側からすると、「いつ入国できるのか分からない」「採用計画が立てづらい」という深刻な問題が生じています。

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話題のタイ経由ルートとは

こうした状況を背景に注目されているのが「タイ経由ルート」です。これは、ミャンマー国内の手続きや出国の難しさを回避するため、ミャンマーから直接日本へ渡航するのではなく、一度タイへ出国し、タイ滞在中に日本入国の手続きを進めるという手法です。

タイ経由が検討される理由

タイ経由ルートが検討される主な理由は以下の通りです。

出国手続きの不安定さの回避: COE(在留資格認定証明書:日本に入国するための許可証)が交付されても、ミャンマー側の手続きが進まず出国できない事態を防ぐため。

OWIC発行の遅延対策: 手続きに時間がかかるOWICの取得を待たず、とにかく第三国へ脱出するため。

候補者側の切実な事情: 「早く日本で働きたい」「家庭の経済的事情がある」といった切迫した状況。

これらを見ると「タイ経由なら早く来日できそう」と期待するかもしれません。しかし、外国人採用の専門家の視点から言えば、このルートを通常の採用手段として安易に選ぶことには強く反対します。

最大のリスクは余計なコスト

タイ経由ルートを避けるべき最大の理由は、正規ルートに比べて多大な追加コストが発生する点にあります。

通常の正規ルートで必要な費用は、日本語学校の授業料、職業斡旋の手数料(上限1,500米ドル)、査証(ビザ)申請費用、航空券代などに限られます。しかし、タイ経由にすると以下の費用が追加で発生します。

・ミャンマーからタイへの移動費
・タイでの滞在費・生活費・交通費
・第三国滞在中の手続きサポート費用・追加の書類取得費用

さらに重大な事実をお伝えします。2026年1月にヤンゴンを訪問し、現地の出入国管理実務に関わる関係者から直接情報を得たところによると、タイ経由で出国する際、ミャンマーやタイの入管職員に対し、いわゆる賄賂に近い非公式な支払いが発生しているケースがあるとのことです。これらを含めると、渡航関連費用の総額が40万円程度に膨れ上がることもあります。

金銭面以外の見えないコスト

コストはお金だけではありません。「時間」や「心理的負担」という見えないコストも存在します。

タイ移動後に日本のビザ手続きが想定通り進まなければ、候補者は見知らぬ第三国で待機することになります。待機期間が長引けば、生活費が底をつく不安や精神的ストレスが増大し、他社への人材流出リスクも高まります。

費用負担によるトラブルの種

外国人採用で最も避けるべきは、候補者が多額の借金を抱えて来日することです。

タイ経由で発生した高額な費用を本人が負担している場合、来日後に「借金を早く返すために違法な長時間労働を希望する」「少しでも給与の高い会社へ転職(失踪)する」といったトラブルの火種になります。特定技能は人材を使い捨てる制度ではなく、適正に保護し、長く働いてもらうための制度です。本人の負担が増えるルートは、その根本的な理念に反します。

責任の所在が曖昧になる危険性

正規ルートであれば、ミャンマー側の送出し機関と日本側の受入企業で責任分担が明確です。しかし、タイ経由になると「タイでの滞在手配」「タイでの在留資格の確認」「トラブル発生時の対応」を誰が担うのかが極めて不明確になります。

複数のブローカーや非公式な仲介者が関与するルートは、「早く入国できます」という甘い言葉だけで判断してはいけません。

外食分野の停止事例と待機リスク

タイ経由のリスクが如実に表れたのが、2026年4月13日からの特定技能「外食業分野」の新規受入れ一時停止(出入国在留管理庁発表資料より)です。

すでに試験に合格し、タイに滞在しながら日本への渡航を待っていた候補者にとっては致命的なダメージとなりました。制度変更や審査遅延が起きた際、すでに母国を離れて第三国にいる候補者の滞在費や生活費を誰が負担するのか。このような予測不能なリスクを抱えたまま採用計画を進めるのは非常に危険です。

コンプライアンス違反の危険

企業側が「不透明な費用負担や非公式な支払いがあるとは知らなかった」と主張しても、コンプライアンス(法令遵守)上の責任を免れるとは限りません。

特定技能制度では、費用の透明性と適正な受入れが厳しく求められます。将来のビザ更新時や行政の監査において、「採用過程で不当な費用負担がなかったか」を説明できない状態は、企業にとって致命的なリスクとなります。

特定活動ビザでの採用時の注意

ミャンマー人材の採用を検討する際、「特定活動」というビザで滞在している方の採用を考えるケースもあります。

ミャンマー本国の情勢を踏まえ、日本政府は緊急避難措置として「特定活動(就労可)」のビザを認める場合があります。ただし、この「特定活動」は特定技能とは全く別のビザであり、自動的に特定技能へ移行できるわけではありません。

2024年10月以降、技能実習を修了していない場合、特定活動への変更が認められる範囲は限定されています。「ミャンマー人なら誰でも特定活動で働ける」という誤った認識で採用を進めると、ビザの更新や変更の際に大きなトラブルとなります。

正規ルートを優先すべき理由

外国人採用の専門家としての結論は明確です。時間がかかったとしても、ミャンマー人材の特定技能採用は原則として正規ルートを優先すべきです。

現在のミャンマー情勢により、男性の出国が厳しく制限されていたり、女性であっても手続きが恣意的に止められたりするなど、正規ルートが決してスムーズではないことは熟知しています。企業が「1日でも早く人材を確保したい」と焦るお気持ちも痛いほど理解できます。

しかし、入国後の定着や企業のコンプライアンス、そして何より日本で働く外国人本人の人生を考えたとき、不透明な費用と責任の曖昧さを伴うタイ経由ルートは、あまりにも代償が大きすぎます。

タイ経由は例外的な対応に留める

タイ経由ルートは便利な「近道」ではありません。管理すべきリスクが激増する「茨の道」です。

どうしてもタイ経由を利用せざるを得ない特段の事情がある場合は、以下の項目を事前にすべて確認・文書化し、例外的な対応としてのみ慎重に進める必要があります。

例外
  • 発生する費用の総額と内訳
  • 費用の負担者(企業か本人か)と本人の明確な同意
  • 第三国(タイ)での適法な滞在状態の確保
  • 手続きがストップした場合の返金条件と企業の責任範囲

外国人採用を成功させるためのゴールは「早く入国させること」ではなく、「入国後に安心して長く働き、企業の戦力になってもらうこと」です。目先のスピードにとらわれず、適正で透明性のある採用ルートを選択してください。

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