
インバウンド需要が回復し、観光産業は再び盛り上がりを見せています。しかし現場では「求人を出しても人が来ない」と悩む企業が後を絶ちません。実はこの人手不足、単なる「労働力不足」ではなく「賃金や待遇」に根本的な原因があります。本記事では、観光業の人手不足の本質を紐解きながら、ピンチをチャンスに変える「賃上げ戦略」と「外国人採用」のポイントをわかりやすく解説します。
・観光産業における人手不足の「本当の原因」
・客室単価の向上やDXを活用した「賃上げを実現する経営のコツ」
・人手不足解消の切り札となる「外国人採用を成功させるヒント」
観光業の人手不足、本当の原因は?
インバウンドの回復とともに、日本の観光産業は再び「成長産業」として注目を集めています。政府が発表した観光立国推進基本計画(2023年策定)や近年の観光庁のデータからも、2025年の旅行消費額約9.5兆円、そして政府目標の15兆円という数字は現実的な目標値として認識されています。

しかし、現場では深刻な人手不足が顕在化し、需要があっても稼働を制限せざるを得ないケースが散見されます。この問題をどう捉えるかが、今後の経営を大きく左右します。
「人がいない」は間違い?
観光産業の人手不足は日本固有の問題ではありません。国際的な業界団体の予測でも、今後10年で世界全体で数千万人規模の労働力が不足する可能性が指摘されています。
しかし、日本における問題の核心は「人が全くいない」ことではありません。「現在の賃金水準と働き方では、人が集まらない」という、業界自体の魅力不足にあります。
米国の事例を見ると、この事実はさらに明確になります。ホスピタリティ産業のトップ校であるセントラル・フロリダ大学の原忠之氏によれば、米国でもかつて宿泊・飲食業は「低賃金・重労働」の代名詞でした。
しかし、パンデミック後の需要回復期に企業が時給を大幅に引き上げた結果、他産業からの労働移動が起きました。つまり、「人がいないのではなく、賃金が低かっただけ」という事実に業界自身が気づいたのです。
低賃金と長時間労働の放置
日本の観光産業、とりわけ宿泊・飲食業は、長年にわたり「低賃金・長時間労働」という構造を放置してきました。全産業の中で比較しても、観光・宿泊業の賃金水準は平均を大きく下回り、非正規雇用の比率も高い状態が続いています。
少子高齢化によって日本全体の労働人口が減少する中、賃金水準が相対的に低い業界が、若年層や優秀な専門人材から選ばれにくくなるのは必然です。需要が回復しても供給(スタッフ)が追いつかないという、成長産業にとって致命的なボトルネックを、業界自身が作り出していると言えます。
なぜ日本の観光業は賃金が低い?
「賃金を上げれば人が来るのはわかるが、現実的に厳しい」と考える経営者や人事担当者は少なくありません。日本の観光業で賃金が上がらない背景には、一時的な景気では説明できない「3つの構造的な要因」が存在します。

稼働率重視による利益の低下
第一の要因は、日本の宿泊業が長年「稼働率中心」の経営をしてきたことです。
欧米のホテルでは、需要が強い時期には価格を引き上げ、稼働率が多少下がっても全体の収益を最大化する戦略が一般的です。この収益性を決める指標がRevPAR(レヴパー:客室販売可能一室あたりの売上。部屋の単価×稼働率で計算する、本当の儲けを示す指標)です。
一方、日本では「満室にすること」が重視され、稼働率を上げるために価格を下げる傾向が強くありました。その結果、客数は増えても利益率が上がらず、スタッフに還元する人件費の原資が生まれない「低価格=低賃金モデル」が定着してしまったのです。
人件費をコストとみなす罠
第二の要因は、人件費を「投資」ではなく「削減すべきコスト」として扱ってきた点です。
ホスピタリティ産業において、顧客体験やサービス品質、ブランド評価を生み出すのは「人」に他なりません。しかし、多くの企業では基本給を抑え、業績の良い時だけ賞与で調整するという仕組みをとってきました。
この構造では従業員の生活が安定せず、離職率が高くなります。結果として、せっかくの教育投資が回収できず、組織にノウハウが蓄積されないという悪循環に陥っています。
業界の分散とブランドの弱さ
第三の要因は、産業構造の分散性です。日本の宿泊業は客室数100室未満の中小企業や家族経営の施設が多く、地域ごとに市場が分断されています。
世界の大手ホテルチェーン(マリオットやヒルトンなど)は、需要に応じて客室価格を調整して売上を最大化し、その利益を人材教育や賃金に再投資しています。価格が上がり、人材投資が進み、サービス品質が向上し、さらに価格が上がるという好循環です。日本の中小規模の施設では、こうした統一ブランドによる価格維持や人材市場の形成が難しく、価格競争に巻き込まれやすいという弱点を持っています。
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賃上げを実現する3つの解決策
では、どうすれば「賃上げ」を実現し、人手不足を解消できるのでしょうか。重要なのは、非常事態に備えて賃金を抑え続けるのではなく、平時の収益構造を根本から変えることです。
稼働率より客室単価が重要
まずは稼働率至上主義から脱却し、単価・滞在価値・需要の平準化という3つの軸で付加価値を高める必要があります。
需要の強い時期(繁忙期)には適切な価格設定で利益を確保し、連泊や館内での消費を促すことで「顧客一人あたりの単価」を引き上げます。薄利多売の構造を改めることが、賃上げの原資を生み出す第一歩です。
DXで賃上げの原資を生む
次に不可欠なのが、DXの活用です。ここで注意すべきは、DXの目的を「単なる人減らし(省人化)」と捉えないことです。
モバイルチェックインやセルフオーダー、清掃の最適化システムなどの導入は、「人手制約の中でも、少ない人数で高い付加価値(売上)を生み出すための装置」です。労働生産性(スタッフ1人が1時間あたりに生み出す成果)を高め、そこで生まれた利益を内部留保に回すのではなく、「基本給の引き上げ」に明確に充てることが、採用競争を勝ち抜く絶対条件となります。
危機に強い収益構造をつくる
「コロナ禍のような需要急減があるため、固定費である基本給は上げられない」という声もあります。しかし、100年に一度の事態を前提に平時の賃金を抑え続けることは、目の前の成長機会を自ら放棄する行為です。
現在の最大のリスクは「需要はあるのに、人が足りずに稼働できない」ことです。平時に単価を引き上げ、DXで生産性を高めて粗利率(売上から原価を引いた利益の割合)を向上させておけば、万が一の危機時にも一時的な雇用調整や公的支援で十分に乗り越える体力がつきます。賃金を上げられない構造のままでいることこそが、最も危険な経営状態なのです。
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成長の鍵は「外国人採用」にあり
賃上げ可能な収益構造へと舵を切る決断ができたら、次に取り組むべきは「誰を採用するか」です。ここで強力な成長の原動力となるのが、外国人採用です。

賃金水準を改善した企業にとって、外国人材は単なる「労働力の穴埋め」ではなく、企業価値を高める重要なパートナーとなります。
外国人材がもたらす新たな価値
外国人採用には、現在の観光産業が抱える課題を解決する多くのメリットがあります。
- インバウンド対応の即戦力:語学力や異文化への理解を持つ外国人スタッフは、急増する訪日客へのきめ細やかな対応(ホスピタリティ)において即戦力となります。母国語でのSNS発信などを通じて、新たな顧客層の開拓にも繋がります。
- 高いモチベーションと定着率:「日本で働き、キャリアを築きたい」という強い意欲を持つ外国人材は非常に多く、適切な評価と賃金テーブルを用意すれば、日本人従業員以上に長く定着し、中核人材へと成長します。
- 組織全体の活性化:多様なバックグラウンドを持つスタッフが加わることで、既存の日本人スタッフにも良い刺激となり、業務改善や新しいアイデアが生まれやすい環境が構築されます。
ビザ・在留資格手続きの基礎
外国人を採用する際、人事担当者が最初につまずきやすいのが「ビザ(在留資格)」の手続きです。観光・宿泊業で外国人を雇用する場合、主に以下の2つの在留資格が活用されます。
特定技能:深刻な人手不足に対応するため、即戦力となる外国人を雇用するための制度です。「宿泊」や「外食業」などの分野が設けられており、フロント業務、接客、レストランサービスなど幅広い現場業務に従事させることが可能です。
技術・人文知識・国際業務:通訳・翻訳、マーケティング、海外向け広報など、専門的な知識やスキルを活かす業務に就くための在留資格です。大学等で関連する分野を専攻していたことなどが条件となります。
自社の募集ポジションに合わせて適切な在留資格を見極め、法令を遵守した手続きを行うことが、外国人採用を成功させる必須条件です。
外国人採用はお気軽にご相談ください。
まとめ:賃上げと外国人採用の決断
日本の観光産業がこの先も成長産業であり続けるための分水嶺は、「賃金を上げる覚悟」を持てるかどうかにかかっています。単価の見直しやDXの推進によって収益構造を改善し、その利益を人材へ投資する。そして、意欲ある「外国人材」を適切に迎え入れることで、現場の活力を取り戻すことが可能です。
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