特定技能外国人は時給で雇用していい?給与設定のルールを徹底解説

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外国人雇用を本音で語る「リクアジの編集部」の上田です。本日のトピックはこちら!

・特定技能外国人の時給設定における法的要件と遵守すべきルール
・日本人と同等以上の報酬設定と具体的な判断基準
・福利厚生など待遇改善の待遇改善ポイント

特定技能外国人の採用を検討中の人事・経営者の皆様。「時給で雇って問題ない?」「日本人と同等以上の給与とは?」といった疑問をお持ちではありませんか?

給与設定は法令遵守はもちろん、優秀な人材確保・定着にも直結します。本記事では時給設定のルールや実務上の注意点、待遇改善のポイントまで具体的に解説。採用の不安を解消し、自信を持って外国人雇用を進めるための一助となる内容です。

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特定技能外国人の時給設定、本当に大丈夫?

結論から申し上げますと、特定技能外国人を時給制で雇用すること自体に、法的な問題は一切ありません。日本の労働市場では、パートタイマーやアルバイトなど、時給制の雇用形態は一般的であり、それは特定技能外国人にも同様に適用されます。

しかし、「時給でOK」という事実だけで安心してしまうのは非常に危険です。問題の本質は雇用形態ではなく、「時給の金額」とその「設定根拠」にあります。特定技能外国人の給与には、日本の労働関連法令に加え、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づく特別な要件が課せられています。

これらのルールを正しく理解せずに時給を設定してしまうと、在留資格の申請が不許可になるだけでなく、後々の労務トラブルや行政指導、最悪の場合は特定技能外国人の受け入れ停止といった厳しい処分に繋がる可能性すらあります。

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特定技能外国人の時給設定、企業が知るべき基本

まず、特定技能外国人の給与を考える上で、制度の根本的な思想と、給与に関する法律の基本を押さえることが全ての土台となります。

特定技能制度とは?時給との関係

特定技能制度は、国内での人材確保が困難な状況にある特定産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とした在留資格です。この制度の根幹をなすのが、「外国人材を安価な労働力としてではなく、日本人と同様の労働者として適正に処遇する」という大原則です。

特に重要なのが、特定技能外国人は「技能実習生」とは異なり、「即戦力」として期待されている点です。彼らは技能実習制度のように「学びながら働く」のではなく、入国当初から企業の生産活動に直接貢献することが求められています。

企業は、彼らが持つ技能や貢献度を正当に評価し、それを給与に反映させる義務があるのです。したがって、時給制で雇用する場合も、その単価が彼らの価値に見合ったものであり、かつ日本人従業員との間に不合理な差がないことが絶対条件となります。

特定技能外国人の給与、法的な基本

特定技能外国人の給与設定において、企業が同時に遵守しなければならない法律は、主に以下の2つです。

POINT!
  1. 労働基準法や最低賃金法などの労働関連法令は、国籍を問わず日本で働く全ての労働者に適用されます。労働時間・休日・最低賃金などの基準は、特定技能外国人にも当然適用され、例外はありません。
  2. 入管法では、特定技能の許可条件として「日本人と同等以上の報酬」が明記されており、給与設定で最も重要なポイントです。

つまり、特定技能外国人の時給を決定する際には、「①最低賃金をクリアしているか」という最低限のチェックに加え、「②同等の業務を行う日本人従業員の給与水準と比較して遜色ないか」という、より高いレベルでの客観的な検証が求められるのです。

特定技能外国人を時給で雇用する際の注意点

それでは、具体的に時給を設定する際に、どのような点に注意すればよいのでしょうか。法的な側面と、最重要要件である「日本人と同等以上」の原則について、さらに詳しく掘り下げていきます。

最低賃金法、外国人にも適用されます

言うまでもありませんが、特定技能外国人にも日本の最低賃金法が適用されます。最低賃金には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類があり、両方が適用される場合は、高い方の金額以上の賃金を支払わなければなりません。

地域別最低賃金: 各都道府県ごとに定められています。事業所の所在地によって金額が異なります。
・特定(産業別)最低賃金: 特定の産業(例:鉄鋼業、機械器具製造業など)について、地域別最低賃金よりも高い水準が設定されている場合があります。

例えば、大阪府の地域別最低賃金が1,114円(2025年7月時点の参考値)だとしても、もし自社が該当する産業の特定最低賃金が1,200円であれば、時給は必ず1,200円以上でなければなりません。これを1円でも下回れば法律違反となり、罰則(50万円以下の罰金)の対象となります。最低賃金は毎年10月頃に改定されることが多いため、必ず厚生労働省のサイト等で最新の情報を確認する習慣をつけましょう。

参考情報: 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」

「日本人と同等以上」は必須要件

ここが特定技能外国人の給与設定における最大のポイントです。この基準を満たさなければ、在留資格は許可されません。

比較対象となる「日本人」とは?

まず、「誰と比べるのか」を明確にする必要があります。比較対象となるのは、「特定技能外国人が従事する業務と同等の業務に従事する日本人労働者」です。同等性の判断は、以下の要素を総合的に考慮して行われます。

職務内容(業務内容)
例)同じ製造ラインでも、日本人は機械のセッティングやトラブル対応まで行う一方、特定技能外国人は部品の組付けのみ、という場合は「同等」とは言えません。

責任の程度
例)チームリーダーとして後輩の指導も担う日本人と、指示通りに作業するだけの特定技能外国人では、責任の程度が異なります。

経験、能力
例)勤続10年のベテラン日本人と、入社1年目の特定技能外国人を単純比較することはできません。

自社に、これらの条件が合致する日本人従業員がいる場合、その従業員の給与が比較の基準となります。

比較対象の日本人がいない場合はどうする?

特に中小企業などでは、比較対象となる日本人従業員がいないケースも少なくありません。その場合は、自社の給与水準が客観的に見て妥当であることを証明する必要があります。

方法①:近隣同業他社の賃金水準を参考にする自社の事業所と同じ地域にある、同業他社の求人情報(ハローワークインターネットサービスなど)を複数探し、同程度の業務内容・経験で募集されている賃金水準を参考に、「当社の給与は地域の相場と比較して遜色ありません」と説明します。

方法②:社内の賃金規程に基づき、経験や資格を考慮して等級を決定し、時給を設定します。日本人と同様の基準を用いることで、公平性と客観性を担保できます。

合理的な理由があれば差は許される?

原則として待遇差は認められませんが、客観的かつ合理的な理由があり、その理由を本人に十分に説明し、納得を得ている場合に限り、個別の待遇差が許容されることがあります。

しかし、「合理的」のハードルは非常に高いと認識してください。

認められやすい例
  • 勤続年数や経験の違い: 勤続年数に応じた賃金テーブル上の差。
  • 役職や責任範囲の明確な違い: 職務記述書などで責任範囲の違いが明示されている場合。
  • 成果や成績の違い: 公平な人事評価制度に基づき、成果に応じて賞与額に差が出る場合。
認められないNG例
  • 「外国人だから」: 明確な差別にあたります。
  • 「日本語能力が低いから」: 特定技能は業務に必要な日本語能力があることが前提です。これを理由に給与を下げることは原則認められません。
  • 「いずれ帰国するから」: 雇用期間中の労働の対価であり、将来のことは関係ありません。

待遇差を設ける場合は、その合理的な理由を「報酬に関する説明書」などの書面に明記し、本人が理解した上で署名をもらうといった手続きを踏むことが、トラブル防止の観点から強く推奨されます。

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給与以外の待遇も重要!選ばれる企業になるには

これからの人材獲得競争の時代、優秀な外国人材に選ばれ、長く活躍してもらうためには、法定の給与水準を守るだけでは不十分です。給与以外の待遇、特に日本での生活基盤を支える要素が、企業の真の魅力として問われます。

社会保険加入、説明責任

特定技能外国人も、日本人従業員と同様に社会保険(健康保険、厚生年金保険)および労働保険(雇用保険、労災保険)への加入が法律で義務付けられています。これは、企業の規模や雇用形態(時給制・月給制)に関わらず、法定の加入要件を満たす全ての従業員に適用されます。

企業は、単に手続きを行うだけでなく、以下の点について外国人従業員に母国語の資料を交えるなどして、分かりやすく説明する責任があります。

保険料の負担:給与から天引きされる保険料の金額と、それが「会社と本人が半分ずつ負担している」という事実を説明し、会社もサポートしている姿勢を見せます。

脱退一時金制度:年金の受給資格期間(10年)を満たさずに帰国する場合、納めた保険料の一部が返還される「脱退一時金」制度があることを必ず伝えましょう。

これらの丁寧な説明は、給与から天引きされる金額への漠然とした不満を解消し、「この会社は自分の生活をきちんと考えてくれている」という安心感と信頼関係を築く上で非常に効果的です。

税金は居住状況で変わる?詳しく解説

外国人従業員の税金(所得税・住民税)は、その人の居住状況によって扱いが異なります。1年以上の雇用契約を結ぶ特定技能外国人は、税法上「居住者」として扱われ、基本的には日本人と同じルールが適用されます。

企業として特に注意し、事前に説明すべきなのは「住民税」です。

所得税:毎月の給与から源泉徴収され、年末に年末調整で精算します。

住民税前年の1月1日~12月31日の所得に基づいて税額が計算され、翌年の6月から給与天引き(特別徴収)が始まります。

つまり、入社1年目は住民税の天引きがないため手取り額が多いですが、2年目の6月になると突然住民税の天引きが始まり、手取りが月額数万円程度減ることになります。これを事前に説明しておかないと、「会社に給料を不当に減らされた」という深刻な誤解やトラブルに発展しかねません。「2年目から手取り額が変わる」ことは、入社時に必ず伝えておくべき重要事項です。

「可処分所得」を意識した待遇設計

外国人材に「本当に選ばれる企業」になるための鍵は、給与の額面である「名目所得」ではなく、そこから税金や社会保険料、そして生活費を差し引いた「自由に使える手取り額」をいかに増やしてあげられるか、という視点です。

以下のような福利厚生は、実質的な可処分所得を高める上で絶大な効果を発揮します。

🏠 住宅支援
  • 社員寮・借り上げ社宅の提供:最大の固定費である家賃を大幅に削減。
  • 住宅手当の支給:寮がない場合でも家賃補助で生活をサポート。
🍱 生活コストの削減支援
  • 食事補助:社員食堂の提供や食事手当支給で日々の食費を節約。
🚀 キャリアと生活の質の向上
  • 資格取得支援:介護福祉士や建設機械などの資格取得費用を会社が補助。
  • 日本語学習支援:業務時間内の学習や講座費用補助で生活の質を向上。
  • 一時帰国費用補助:勤続年数に応じた帰国補助で家族との時間を大切に。

これらの施策は単なるコストではなく、優秀な人材を確保・定着させ、生産性を向上させるための重要な「戦略的投資」と捉えるべきです。

時給設定でよくある疑問と解決策

ここでは、特定技能外国人の給与体系に関して、企業から寄せられることの多い具体的な疑問とその解決策を解説します。

給与交渉、どう対応すべき?

外国人材から給与交渉を持ちかけられた際、感情的になったり、門前払いしたりするのは最悪の対応です。重要なのは、公平で透明性のある評価制度に基づいて、一人のプロフェッショナルとして冷静に対応することです。

評価・昇給基準の明確化と公開
スキルや成果に応じた昇給基準を明示し全員に共有。「機械操作で+50円」「指導で手当+5,000円」など具体例があると交渉もスムーズに。

定期的な面談の実施
企業側から定期的に面談を行い、評価や希望を聞くことで、不満の解消やモチベーション向上につながります。

手当・賞与の考え方と注意点

基本給(時給)だけでなく、各種手当や賞与も「日本人と同等以上」の原則が適用される重要な報酬の一部です。

各種手当
通勤・住宅・家族・役職手当の支給要件は就業規則に明記を。国籍や雇用形態のみを理由にした不合理な差別は認められません。

賞与(ボーナス)
賞与制度がある場合は、日本人と同一基準で算定。支給しない場合は契約書に明記し、月給に賞与分が含まれていることを合理的に説明できるようにしましょう。

昇給制度
勤続年数や技能・語学力・資格などを評価基準にした、明確な昇給制度とキャリアパス設計が重要です。

まとめ

特定技能外国人の時給設定は、法令遵守だけでなく優秀な人材を惹きつけ、育てるための採用戦略です。時給制は可能ですが、最低賃金や「日本人と同等以上の報酬」などの法的要件を満たす必要があります。

比較対象がいない場合は、地域相場や賃金規程で妥当性を証明しましょう。額面だけでなく住宅支援や手当、丁寧な説明など可処分所得への配慮も大切です。本記事が貴社の外国人採用の成功につながれば幸いです。

この記事の監修者

プロフィールカード
プロフィール画像
キャリアアドバイザー
秦 秀斗

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。

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