「妊娠で帰国」は誤解?外国人採用で知っておくべき母性保護の基本

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現在、日本で働く外国人の数は「395万6,619人」に達し、過去最多を更新しています(2025年出入国在留管理庁発表)。人手不足が深刻な日本において、外国人材はもはや「一時的な労働力」ではなく、地域社会や企業を支える「大切なパートナー」です。

しかし、その裏側で、外国人女性たちが誰にも相談できず一人で出産する「孤立出産」が後を絶ちません。なぜ、彼女たちは助けを求められなかったのでしょうか。

本記事では、実際に起きた裁判事例や成功事例を交えながら、外国人採用を行う企業が知っておくべき法律、そして「孤立」を防ぐための具体的な体制づくりを詳しく解説します。

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なぜ技能実習生の「孤立出産」は起きるのか

「妊娠したら、すべてが終わる」

そう思い詰めている実習生が少なくありません。悲しい事件が繰り返される背景には、彼女たちが抱える深い恐怖心があります。

妊娠したら帰国させられるという恐怖

2025年11月、福岡高裁で一つの判決が言い渡されました。交際相手の家で死産した赤ちゃんを遺棄したとして罪に問われた、ベトナム人技能実習生の女性に対する有罪判決(執行猶予付き)です。

彼女は裁判でこう訴えました。

「妊娠したら帰国させられる。怖くて誰にも相談できなかった」

このように、「妊娠=強制帰国」という強い思い込みが、彼女たちを孤立へと追い込んでいます。たとえ体調が悪くても、お腹が目立ってきても、仕事を失いたくない一心で周囲に隠し通そうとするのです。

母国の送り出し機関による誤った指導

なぜ「帰国させられる」と強く思い込むのでしょうか。その一因は、来日前に母国の「送り出し機関(外国現地で実習生を募集し、日本へ送り出す施設)」から受ける指導にあります。

一部の機関では、契約書に「妊娠した場合は帰国する」といった不適切な条項を盛り込んだり、口頭で「日本で子供を作ってはいけない」と厳しく言い含めたりするケースがあります。これらは日本の法律では認められない内容ですが、実習生にとっては「絶対のルール」として刷り込まれてしまいます。

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企業が守るべき「妊娠・出産」の法律

日本で働く以上、国籍を問わず、すべての外国人に日本の労働法が適用されます。人事担当者がまず理解しておくべきは、「妊娠を理由とした不利益な扱いは法律違反である」という点です。

不利益な扱いは法律禁止されています

「男女雇用機会均等法(男女が平等に働けるよう定めた法律)」により、以下の行為は固く禁じられています。

・妊娠や出産を理由に解雇すること
・契約の更新を拒否すること
・不当に給与を下げたり、役職を下げたりすること

もし企業が「妊娠したなら帰国しなさい」と促したり、無理に退職を迫ったりした場合、法的なペナルティを受けるだけでなく、企業の信頼を大きく損なうことになります。

産前産後休業や育児休業は外国人も対象

外国人であっても、要件を満たせば「産前産後休業」「育児休業」を取得する権利があります。また、出産時には「出産育児一時金」の受給も可能です。

用語解説:出産育児一時金

健康保険に加入していれば、子供一人につき原則50万円(2025年現在)が支給される制度です。外国人実習生も、社会保険に加入していれば受け取ることができます。

これらの権利があることを、雇用主である企業側が正しく理解し、本人に伝えることが孤立を防ぐ第一歩となります。

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孤立を防ぐために企業が取り組むべきこと

「何かあったら言ってね」と伝えるだけでは、外国人社員の不安は解消されません。企業には、実習生が「この会社なら助けてくれる」と思える環境づくりが求められます。

何でも相談できる心理的安全性の確保

「心理的安全性(自分の気持ちを安心して話せる状態)」をいかに作るかが鍵となります。

上智大学の田中雅子教授は、「妊娠をタブー視せず、あることを前提に『私に相談していいんですよ』とアピールすることが重要」と提言しています。

定期的な面談の際、仕事の話だけでなく「生活で困っていることはないか」「体調はどうか」と親身に問いかける姿勢が、信頼関係を築きます。

日本の医療制度や避妊に関する情報提供

日本と母国では、性教育や避妊、医療制度に対する考え方が大きく異なる場合があります。実際に、自ら産婦人科に通い、経口避妊薬(ピル)を服用して自分の体を守っている実習生もいます。

企業としては、以下の情報を事前に(あるいは定期的に)周知しておくことが望ましいです。

・近くの産婦人科の場所
・避妊についての正しい知識
・妊娠が分かった際、最初に行くべき窓口

外部の相談窓口や行政機関との連携

自社だけで解決しようとせず、外部の力を借りることも重要です。「出入国在留管理局(入管)」や、各自治体の「外国人相談窓口」では、妊娠・出産に関する多言語での相談を受け付けています。

また、「日本語パートナー(日本語を教えるボランティア)」地域のNPO団体など、実習生が「会社以外で相談できる場所」を把握し、紹介できるようにしておきましょう。

【事例】出産を経て働き続ける実習生

孤立出産という悲しい出来事がある一方で、企業の理解と協力により、出産を経て活躍し続けているケースも存在します。

職場の理解が「貴重な戦力」を守る

鹿児島県枕崎市の養豚場(岩戸牧場)で働くベトナム人のイーフンさんは、3年前に男の子を出産しました。妊娠が発覚した当初、彼女も「帰国させられるのでは」と大きな不安を抱えていたといいます。

しかし、職場に相談したところ、周囲の反応は温かいものでした。牧場の宮路里佳子さんはこう語ります。

「ずっと働いてもらえるのは素晴らしいこと。何も拒否することはないと思いました」

育児と仕事を両立させるサポート体制

妊娠中、重労働が難しい時期には、同僚が作業を代わってくれるなどのサポートがありました。現在は、息子を地元の保育園に預けながら、特定技能の資格を取得して仕事を続けています。

このように、企業側が「柔軟な対応」を見せることで、優秀な人材を手放さずに済み、長期的な戦力として定着させることが可能になります。

成功のポイント
  • 早期の相談:本人が「怒られない」と確信できる関係性
  • 同僚の理解:現場スタッフへの丁寧な説明とフォロー
  • 地域との連携:保育園の確保など、生活面のサポート

よくある質問:在留資格(ビザ)の手続きはどうなる?

実習生が妊娠・出産する場合、在留資格の手続きが複雑になることがあります。

  • 出産のために一時帰国する場合:在留資格を継続したまま帰国する手続き(再入国許可)が必要です。
  • 日本で出産して働き続ける場合:子供の在留資格申請も必要になります。
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まとめ:共生が外国人採用の成功を握る

外国人技能実習生の「孤立出産」は、決して本人たちだけの問題ではありません。受け入れる企業、そして日本社会全体が「彼女たちの命と権利をどう守るか」を問われています。

「妊娠=トラブル」と捉えるのではなく、一人の人間としてのライフイベントをどうサポートし、共に歩んでいくか。その姿勢こそが、結果として「この会社で長く働きたい」という意欲を引き出し、外国人採用の成功へと繋がります。

外国人社員が安心して働ける環境づくりは、結果として日本人社員にとっても働きやすい職場づくりに繋がるはずです。

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