全国1位を獲得した外国人職人|特定技能の実力が明らかに

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建設業界で外国人採用が急増する中、京都の防水工事会社で働く特定技能外国人が、全国大会で日本人職人を抑えて優勝しました。単なる「労働力」として受け入れるのではなく、仲間として技術を磨き、適切に評価した結果生まれた快挙です。本記事では、受け入れ企業がどのように外国人材を育成し、定着につなげたのかを実例をもとに解説します。初めて外国人採用を検討する企業にも役立つポイントをまとめました。

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特定技能人材の全国優勝事例

外国人採用が広がる建設業界で、特定技能の外国人スタッフが日本人を含む全国の職人の中からトップに選ばれる事例が出ています。京都市山科区の建設会社シーレックスに所属するカンボジア出身のポン・チャントッチさんは、2025年に開催された「全国シーリンググランプリ」で初優勝を果たしました。

シーリングは外壁やサッシ周りの隙間を埋める、防水工事に欠かせない高度な工程です。この分野は日本人職人でも技術差が大きく、施工速度や仕上がりの美しさが評価のポイントとなります。その中で、外国人材が堂々と1位を獲得した事例は非常に象徴的です。

カンボジア人職長の快挙

チャントッチさんは2018年に技能実習生として来日し、5年間の実習期間を経て特定技能1号へ移行しました。現在は現場をまとめる「職長」としても信頼される存在です。

全国大会では、各地の予選を勝ち抜いた24名が参加し、施工スピード・精度・仕上がりを総合評価されます。外国人として初めての優勝は、単なる偶然ではなく、企業側の育成環境・本人の努力・評価制度がそろった結果です。

チャントッチさん本人は、「社長のおかげです」と語っていますが、その裏には10年以上かけて築かれた同社の外国人育成ノウハウがあります。

優勝の背景にある育成環境

シーレックスの代表・竹田社長は、「外国人を単なる労働力として扱わない」という方針を貫いてきました。
建設業界では、繁忙期と閑散期の差が大きく「外注化」が一般的で、自社職人を育てにくい業界構造があります。
しかし、竹田社長は40代を迎え、「社会に価値を残す働き方をしたい」と考え、外国人の直接雇用と育成に舵を切りました。

同社の育成環境の特徴は次の通りです。

採用前から技術指導を開始(現地OBによる教育)
来日前に日本語の日常会話レベルを学習
来日後は個別の成長を細かく評価・フィードバック
できないことより、できたことを褒める文化

この方針によって、外国人材は叱られる前提の職場ではなく、成長を喜んでもらえる職場として認識しやすくなります。特に「褒める文化」が大きな効果を生み、日本人であれば3年かかるレベルにわずか3ヶ月で到達するケースもあります。

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建設業で外国人が育つ理由

建設業で特定技能外国人が活躍する理由の一つは、スキルの上達スピードの早さです。これは本人の努力だけでなく、教育設計と職場環境の相性が良いためです。

採用前の技術指導が重要

多くの企業が見落としがちなのが「採用前教育」の重要性です。
シーレックスでは、技能実習を終えて帰国したOBがカンボジア現地で技術を教え、来日前に基本動作を習得させています。

この仕組みは、

現場投入までの時間を短縮
初期離職の予防
職場の安全性向上

につながります。

特定技能では、採用前教育を強化しておくことで、来日後の指導コストが大幅に削減されるため、多くの企業で導入が広がっています。

日本語教育で現場の壁を減らす

外国人採用の課題として最も多く挙がるのが「コミュニケーション」です。
京都労働局の2024年調査でも、外国人雇用企業の半数以上が語学を課題として挙げています。

しかし、シーレックスでは、

・来日前教育で「日常会話レベル」を習得
・現場リーダーによるフォロー
・来日後の指差し確認・専門用語指導

を徹底し、コミュニケーションの壁を大幅に低減しています。

努力を認める評価制度が鍵

日本の建設現場は「できて当たり前」と思われやすく、褒める文化が弱い傾向があります。外国人材にとっては評価の有無がモチベーションに直結するため、努力したら認められる環境は最重要です。

竹田社長は「叱るより、褒めるほうが大事」と語っており、評価制度の在り方がスキル定着のスピードに影響していることがわかります。

企業側の外国人採用の課題

京都府内では2024年の外国人労働者数が過去最多の34,786人(前年比+22.0%)と大幅に増加しました。特に建設業は外国人比率がトップであり、多くの企業が採用を検討しています。

教育体制の整備不足

外国人採用が失敗する最も大きな理由は「教育体制不足」です。

よくある例
  • 日本語説明だけで専門作業を任せてしまう
  • マニュアルが日本人向けのまま
  • OJT担当者が固定されていない
  • 来日前教育がなく、0から教える必要がある

こうした体制不足は、離職・事故リスク・育成遅延につながります。

コミュニケーションの難しさ

企業調査では、外国人採用の課題として「語学・コミュニケーション」が最も多く挙げられますが、実際には日本語力不足そのものが原因でないケースが非常に多いです。

例えば、曖昧な指示や省略された説明が誤解を生み、文化の違いによって相手の受け取り方が変わることもあります。また、努力をどのように評価し、どのタイミングで伝えるかといったフィードバックの文化差も影響します。これらは、指示を具体化する・確認方法を変える・評価を言語化するだけで解決でき、教育方法を少し工夫するだけでコミュニケーションは大きく改善します。

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定着につながる職場づくり

外国人採用の成功は、「採用後の環境づくり」によって決まります。

「仲間意識」を高める取り組み

竹田社長が最も重視しているのが仲間として接すること。単なる戦力として扱うのではなく、チームとして一緒に働く感覚が外国人材の定着に直結します。

・困った時に助け合える文化
・成果を一緒に喜ぶ風土
・生活面の相談にも耳を傾ける
・キャリアの話を常に共有

こうした取り組みは、技能実習・特定技能のどちらにも効果的です。

キャリア設計の共有が重要

特定技能1号の次のステップである「特定技能2号」への移行は、長期定着を考える上で大きなメリットがあります。

在留期間に上限がない
家族を日本へ呼び寄せられる
永住許可の可能性が広がる

こうした未来を共有することで、外国人材のモチベーションが大きく上がります。

建設業の外国人労働者の現状

ここで、最新のデータを基に現状を整理します。(出典:京都労働局、帝国データバンク)

京都府の最新データ

  • 外国人労働者数:34,786人
  • 前年比:+22.0%(2年連続で20%超の伸び)
  • 国籍割合:
     ・ベトナム 25.5%
     ・中国 18.7%
     ・ネパール 8.3%

建設業がトップの受入業種

帝国データバンクの近畿調査によると、

  • 建設業の外国人比率:14.6%(業種トップ)
  • 外国人を雇用する企業割合:23.9%

建設分野では人手不足が深刻であり、外国人採用が重要な柱になっていることが分かります。

まとめ

外国人採用は、人手不足を埋めるための応急処置ではなく、企業が長期的に成長していくための重要な戦略です。シーレックスの事例のように、外国人材の努力や成果を丁寧に認め、共に成長を喜べる環境をつくることで、技術力の向上と定着率の向上が同時に実現します。

採用前教育の充実、日本語と技術の段階的な指導、成果を正しく伝える評価制度、そして仲間として迎え入れる職場文化。この四つが揃えば、外国人材は短期間で高いパフォーマンスを発揮し、企業の中心メンバーとして活躍できるようになります。これから外国人採用を進めたい企業は、今回の成功例をヒントに、自社の育成体制や職場づくりを見直してみてください。

参考:読売新聞(オンライン)

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