技能実習制度廃止へ。育成就労制度で変わる外国人採用のポイントを徹底解説

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「人手不足が深刻で、初めて外国人採用を検討している」「技能実習制度が変わると聞いたが、具体的に何がどうなるのかわからない」企業の経営者や人事・採用担当者の皆様から、このようなお声をよく伺います。

2025年10月に宮崎県の外国人労働者数が過去最多の8,515人を記録したと報じられたように(※1)、今や外国人材は多くの日本企業にとって、事業を支える上で不可欠な存在です。実際に、宮崎県えびの市のある農園経営者は、外国人材の働きぶりを「とんでもない戦力」と表現しています。

そんな中、30年近く日本の外国人材受け入れの根幹を担ってきた「技能実習制度」が廃止され、2026年を目処に新しい「育成就労制度」へ移行することが決定しました。

これは、単なる制度の名称変更ではありません。外国人採用のルールが根本から変わる、大きな転換点です。特に、これまで原則不可能だった「転職の自由化」は、採用した人材がより待遇の良い都市部へ流出するリスクもはらんでいます。

しかし、変化を正しく理解し、適切に対応すれば、これはむしろ「優秀な人材に長く定着してもらう」絶好の機会にもなり得ます。

本記事では、この制度変更の本質をどこよりも分かりやすく解説し、これからの時代に外国人材から「選ばれる企業」になるための具体的な対策まで、徹底的にご紹介します。

(※1)参考情報:FNNプライムオンライン 2025年10月8日配信記事

大きな転換期、技能実習制度が廃止へ

まずは、なぜ今、制度が大きく変わるのか、その背景を正確に理解することが重要です。現在の「技能実習制度」が抱える課題と、廃止に至った経緯を見ていきましょう。

これまでの技能実習制度とは?

技能実習制度は、1993年に創設されました。その公式な目的は、日本が培った技能、技術又は知識を開発途上地域等へ移転し、その地域の経済発展を担う「人づくり」に寄与するという国際貢献です。

  • 目的: あくまで「国際貢献」であり、労働力の需給調整を目的としたものではない。
  • 仕組み: 外国人の技能実習生が、日本の企業と雇用関係を結び、出身国では修得が困難な技能等の修得を目指す。
  • 滞在期間: 技能実習には1号から3号までの区分があり、最長で5年間滞在が可能。
  • 転職: 国際貢献という目的上、技能の移転を途中で放棄することになるため、原則として転職(転籍)は認められない。

この「国際貢献」という建前と、「転職不可」というルールが、制度の大きな特徴でした。しかし、実態としては、人手不足が深刻な産業分野において、貴重な労働力として機能してきた側面も否定できません。

なぜ今、制度が見直されるのか?

この「建前」と「実態」の乖離が、様々な問題を生む温床となっていました。

  • 人権上の問題: 制度の目的が労働力の確保ではないため、労働者としての権利保護が不十分になるケースが発生しました。「転職できない」という実習生の弱い立場を利用した、低賃金での労働、賃金未払い、長時間労働、さらには暴力やパワーハラスメントといった深刻な人権侵害が国内外から厳しく批判されました。
  • 実習生の失踪: より良い労働条件を求め、あるいは劣悪な環境から逃れるために、実習先から失踪する技能実習生が後を絶ちませんでした。
  • 国際社会からの評価: こうした状況は「現代の奴隷制度」と揶揄されることもあり、日本の国際的な評判を損なう一因となっていました。

    政府の有識者会議では、これらの問題点を解消し、外国人材が権利を保護され、安心してキャリアを形成できる環境を整える必要があると結論付けられました。

    その結果、「国際貢献」という建前を取り払い、実態に即した「人材の確保と育成」を目的とする新制度への移行が決まったのです。

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    新しい「育成就労制度」の3つのポイント

    技能実習制度に代わり、新たに導入されるのが「育成就労制度」です。これは、今後の外国人採用のスタンダードとなる重要な制度です。企業の採用担当者様が押さえるべき重要なポイントは、以下の3つです。

    「育成就労制度」と「技能実習制度」 の主な違い
    【新】育成就労制度 【旧】技能実習制度
    【新】育成就労制度
    【旧】技能実習制度
    目的
    人材育成と確保
    国際貢献
    転職(転籍)
    一定の要件下で可能
    原則不可
    キャリアパス
    特定技能への円滑な移行
    育成就労 特定技能
    帰国が前提

    目的が「国際貢献」から「人手確保」へ

    最も本質的な変更点は、制度の目的が「国際貢献」から「日本国内における人材の育成と確保」へと明確に転換されることです。

    これは、日本が公式に外国人材を「労働者」として正面から受け入れ、そのキャリア形成を支援していくという国家としての意思表示です。これにより、労働者としての権利保護が強化されると共に、受け入れる企業側にも、より一層の責任と育成へのコミットメントが求められることになります。

    最大の変更点「転職の自由化」

    企業の採用活動に最も直接的な影響を与えるのが、本人の意向による転籍(転職)が可能になる点です。

    これまでの技能実習制度では、やむを得ない事情がない限り転職は認められませんでした。しかし育成就労制度では、以下のような一定の要件を満たせば、本人が所属先を変更できるようになります。

    【転籍(転職)の主な要件(案)】
    • 同一の業務区分内であること
    • 一つの事業所での就労期間が1年を超えていること
    • 技能検定の基礎級などに合格していること
    • 一定水準の日本語能力(例:日本語能力試験N5程度)を有していること

      ※上記は有識者会議の報告書を基にした想定であり、今後変更される可能性があります。

      この変更は、労働環境が悪い企業からは人材が流出し、逆に労働環境が良い企業には人材が集まる、という健全な労働市場の原理が働くことを意味します。企業はこれまで以上に、自社の労働環境や待遇、働きがいについて見直す必要に迫られます。

      長期就労「特定技能」への道筋

      育成就労制度は、単独で完結する制度ではありません。その先にある長期就労のための在留資格「特定技能」へのスムーズな橋渡しという重要な役割を担っています。

      育成就労から特定技能へのキャリアパス
      1. 育成就労(最長3年間): 入国後、特定産業分野の業務に従事しながら、日本語能力と技能を習得。3年間の就労を経て「特定技能1号」のレベルに達することを目指す。
      2. 特定技能1号(通算5年間): 育成就労を修了した人材は、試験免除などで円滑に特定技能1号へ移行。相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事。
      3. 特定技能2号(上限なし): 特定技能1号を修了し、熟練した技能が求められる試験に合格すると移行可能。在留期間の更新に上限がなくなり、要件を満たせば家族の帯同や永住権の申請も視野に入ります。

      このように、最長3年で育成した人材が、その後も「特定技能」として長期的に日本で活躍できる道筋が明確になります。これは、育成にかけたコストが無駄にならず、企業の持続的な成長に貢献してくれる中核人材を育てられる可能性を示しています。

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      新制度が外国人採用に与える影響

      この制度変更は、採用を行う企業にとって「リスク」と「チャンス」の両面を持っています。両方を正しく理解し、リスクを最小化し、チャンスを最大化する戦略を立てることが求められます。

      【懸念】都市部への人材流出リスク

      転職の自由化によって最も懸念されるのが、地方企業から都市部の企業への人材流出です。

      宮崎県で技能実習生のサポートを行う専門家が「時給の高い都会へ行こうよ、という流れが起こってくる」と指摘している通り、賃金水準の高い都市部に人材が集中する可能性があります。

      【地方企業が直面する可能性のある課題】

      • 賃金格差: 都市部の企業と同じ水準の給与を提示することが難しい。
      • 情報の格差: 外国人材向けの求人情報やコミュニティが都市部に集中しがち。
      • 生活の利便性: 交通の便や商業施設の充実度で都市部に劣る場合がある。

      【好機】優秀な人材の長期雇用が可能に

      一方で、この変化は大きなチャンスでもあります。これまでは、どれだけ優秀な人材を育て上げても、技能実習の期間(最長5年)が終われば原則として帰国しなければなりませんでした。これは企業にとって、大きな投資損失でした。

      しかし新制度では、育成就労を経て特定技能へと移行することで、育成した人材に10年、20年と長期的に活躍してもらうことが可能になります。

      • 育成コストの回収: 時間と費用をかけて教育した技術やノウハウが、企業の資産として蓄積されます。
      • 中核人材の育成: 企業の理念や文化を深く理解した外国人材が、将来のリーダーや管理者候補になる可能性があります。
      • 採用ブランドの向上: 「あの会社は外国人を大切にし、長期的なキャリアを支援してくれる」という評判が、新たな優秀な人材を引き寄せる好循環を生み出します。

      腰を据えて日本で働きたいと考える意欲の高い人材にとって、キャリアパスが明確に示されている企業は非常に魅力的です。リスクを恐れるのではなく、この機会を活かして「選ばれる企業」になるための変革を進めることが、今まさに求められています。

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      人材に選ばれ、定着してもらうための対策

      では、具体的にどうすれば人材流出を防ぎ、優秀な人材に長く定着してもらえるのでしょうか。他社との差別化を図り、「この会社で、この地域で働き続けたい」と思ってもらうための3つの具体的な対策をご紹介します。

      労働環境・待遇の改善は必須項目

      最も基本的かつ重要な対策は、魅力的で公正な労働環境と待遇を整備することです。これは「転職」という選択肢を持つ労働者から選ばれるための最低条件と言えます。

      • 公正な賃金設定: 「最低賃金を守っていれば良い」という考えは通用しません。地域の同業他社や、都市部の賃金水準も意識し、本人のスキルや貢献度に応じて昇給する、公平性の高い給与体系を構築することが重要です。
      • 明確な評価制度: 何を達成すれば評価され、昇給や昇格に繋がるのかを明確に示します。目標設定やフィードバックのための定期的な面談(1on1ミーティングなど)は、モチベーション維持に不可欠です。
      • 働きやすい職場環境: 安全な作業環境の確保はもちろん、有給休暇の取得しやすさ、適切な休憩時間、残業時間の管理などを徹底します。
      • 福利厚生の充実: 住宅手当の支給や、清潔で快適な社宅の提供は、特に地方企業において大きなアピールポイントになります。日本人従業員と同じ福利厚生制度が適用されることを明確に伝えましょう。

      信頼関係を築くコミュニケーション

      待遇面だけでなく、心理的な繋がりやエンゲージメント(仕事への熱意や貢献意欲)を高めることも、定着において極めて重要です。宮崎県で多くのインドネシア人技能実習生を雇用する立久井農園の社長が「(外国人労働者を)自分の子供だと思っている」と語るように、彼らを単なる労働力ではなく、共に働く「仲間」「家族」として尊重する姿勢が求められます。

      • 積極的な声かけと傾聴: 経営者や上司が日常的に声をかけ、仕事の悩みだけでなく、日本での生活の不安などにも耳を傾ける姿勢が信頼関係の土台となります。
      • メンター制度の導入: 年齢の近い日本人従業員を「メンター(相談役)」としてつけ、業務の指導だけでなく、日本の文化や社内ルールなどを教える体制を作ると、孤立を防ぎ、早期の適応を促せます。
      • 日本語学習の支援: 業務に必要な日本語だけでなく、日常会話能力向上のための学習機会(eラーニング、地域の日本語教室情報の提供など)を支援することで、本人の成長意欲に応えることができます。
      • 異文化理解の促進: 外国人材に日本文化を教えるだけでなく、彼らの国の文化や習慣を日本人従業員が学ぶ機会(勉強会、交流イベントなど)を設けることで、相互理解が深まり、一体感のある職場が生まれます。

      地域社会全体での受け入れ体制構築

      企業の努力だけでは限界があります。特に地方においては、企業、行政、地域住民が一体となって外国人材を受け入れるという視点が不可欠です。

      • 行政との連携: 自治体が提供している生活相談窓口、日本語教室、防災情報などを従業員に案内し、活用を促します。
      • 地域コミュニティとの接続: 地域の国際交流協会やNPOと連携し、同じ出身国のコミュニティを紹介したり、地域のお祭りやイベントへの参加を促したりすることで、職場以外での繋がりを作り、孤立感を和らげます。
      • 地域住民への情報発信: 企業が率先して、自社で働く外国人材の活躍ぶりや人柄を地域に発信していくことも大切です。彼らが「地域の一員」として温かく受け入れられる環境は、長期的な定着の大きな後押しとなります。

      「この会社が好き」というだけでなく、「この町が好き」と思ってもらうことが、都市部への人材流出に対する強力な防波堤となるのです。

      まとめ

      今回は、技能実習制度の廃止と、それに代わる「育成就労制度」の導入について、企業の皆様が取るべき対策と共に詳しく解説しました。この制度変更は、すべての企業に対して「外国人材とどう向き合うのか」を改めて問い直すものです。変化の波を脅威と捉えるか、好機と捉えるかで、5年後、10年後の企業の成長は大きく変わってくるはずです。

      弊社「リクアジ」では、今回の育成就労制度への移行に関する最新情報のご提供はもちろん、各企業様のご状況に合わせた最適な外国人採用戦略のご提案を行っております。

      「自社の場合、具体的に何から始めれば良いのか」「新しい制度に対応した求人や受け入れ体制について相談したい」

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