東京は「20人に1人」が外国人。年間35万人増が示す今後の日本と採用戦略

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深刻化する人手不足への対策として外国人採用の重要性が増す一方、「地方では優秀な人材を確保できないのでは」という不安の声も聞かれます。

総務省の最新データでは、日本人が約91万人減少する一方で外国人は約35万人増加し、過去最多を更新しました。しかし、その多くは都市部に集中しています。本記事では、この「人材の偏り」という現実をデータで解き明かし、地方企業が厳しい採用市場を勝ち抜くための具体的な戦略を徹底解説します。

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日本の人口構造に地殻変動。日本人減少、外国人は過去最多へ

外国人採用の戦略を立てる前に、まず日本全体が直面している人口構造を正確に理解することが不可欠です。総務省が発表した最新データは、私たち企業を取り巻く環境が、もはや数年前とは全く異なるフェーズに入ったことを示唆しています。

90万人減った日本人、35万人増えた外国人

令和7年1月1日時点での日本の人口は、衝撃的な数字を示しました。

日本人住民:1億2,065万3,227人(前年から 90万8,574人減少
外国人住民:367万7,463人(前年から 35万4,089人増加

日本人の人口はこれで16年連続の減少となり、その減少幅は過去最大です。年間約91万人の減少というのは、和歌山県 の人口約90万人、わずか1年で日本から減少したのに等しいインパクトです。

一方で、外国人住民は増加の一途をたどり、ついに367万人を突破して過去最多を記録しました。この「日本人の減少」と「外国人の増加」という大きな2つの潮流は、今後、日本の産業構造や労働市場を根底から変えていくことを意味しています。

人口増減の内訳:「自然減」と「社会増」とは

この人口変動の内実を理解するために、「自然増減」と「社会増減」という2つの指標を見てみましょう。

自然増減:期間内の「生まれた数」から「死亡者数」を差し引いた数。
社会増減:期間内の「引っ越してきた人」から「出ていった人」を差し引いた数。
※海外からの移住も含まれます。

この指標で日本人と外国人を比較すると、その構造的な違いが明確になります。

【日本人住民の人口動態】

自然増減:-91万2,161人
(生まれた数 約69万人 vs 死亡者数 約160万人)
社会増減:+3,587人

日本人の人口減少は、死亡者数が出生者数を圧倒的に上回る「自然減」が主な原因です。社会増減がわずかにプラスなのは、海外から帰国する日本人が出国する日本人を少しだけ上回ったことを示していますが、自然減の巨大なマイナスを補うには程遠い状況です。

【外国人住民の人口動態】

自然増減:+1万3,665人
社会増減:+34万424人

外国人は日本国内での出生者数が死亡者数を上回っていますが、それ以上に国外からの転入が圧倒的に多い「社会増」によって人口を大きく伸ばしています。

つまり、現在の日本は「日本人の構造的な自然減を、外国人の社会増が必死に下支えしている」という構図になっているのです。

労働力の中核を担う「生産年齢人口」の動向

採用担当者にとって最も重要な指標が、労働力の中心となる「生産年齢人口(15歳~64歳)」の割合です。ここでも、日本人と外国人の違いは歴然としています。

生産年齢人口(15歳~64歳)の割合比較
  • 日本人住民: (老年人口 29.58%)
  • 外国人住民: 85.77% (老年人口 わずか 6.08%)

日本人住民の年齢構成が、少子高齢化を反映した「逆三角形型(あるいは壺型)」になっているのに対し、外国人住民は労働力の中核を担う世代が突出して多い「ひし形」をしています。特に20代から30代の若年層が厚く、まさに日本の企業が今最も必要としている労働力そのものです。

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【最新データ】外国人材はどこに住んでいるのか?

日本全体で367万人を超えた外国人材ですが、その恩恵をすべての地域が平等に受けているわけではありません。データが示すのは、一部のエリアに人材が集中する「地域偏在」という厳しい現実です。

約7割が三大都市圏に集中するリアル

総務省のデータでは、外国人住民の68.58%が、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)、関西圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)の三大都市圏に居住しています。つまり、日本に住む外国人3人のうち2人以上が、これら3つの大都市圏に集中しているのです。

東京圏の外国人人口:約149万人 (全体の約40.5%)
名古屋圏の外国人人口:約46万人 (全体の約12.5%)
関西圏の外国人人口:約57万人 (全体の約15.5%)

この現実は、地方の企業が都市部の企業と同じ土俵で採用活動を行うことの難しさを物語っています。

都道府県別ランキング:東京が突出、地方との格差

都道府県単位で見ると、この傾向はさらに顕著になります。

人口の多い都道府県
順位 都道府県名 人口
1東京都721,223
2大阪府328,128
3愛知県321,905
4神奈川県284,889
5埼玉県237,656
6千葉県227,043
7兵庫県140,102
8静岡県114,661
9福岡県111,461
10茨城県100,188
人口の少ない都道府県
順位 都道府県名 人口
1秋田県5,753
2鳥取県6,061
3高知県6,065
4青森県6,671
5徳島県7,049
6和歌山県7,679
7山形県10,318
8島根県10,318
9岩手県11,165
10佐賀県11,175

(出典:令和7年 外国人住民)

東京都と秋田県では、その数に約125倍もの開きがあります。また、人口全体に占める割合で見ても、東京都が5.15%(約20人に1人)であるのに対し、秋田県は0.63%(約159人に1人)と、まさに桁違いの差です。

さらに注目すべきは、人口が増加した数少ない都県における外国人の役割です。例えば、東京都の総人口は前年から約9万人増加しましたが、そのうち日本人の増加は約1万7千人。増加分の実質81.4%は外国人住民の増加によるものでした。これは、もはや外国人なしでは都市の成長も維持できない段階に入っていることを示しています。

94%が「市区部」を選択、町村部はわずか6%

居住地の粒度をさらに細かく、「市区部」と「町村部」で比較すると、その集中度は決定的になります。

市区部(政令市や一般市)在住の外国人:345万5,772人 (94.0%)
町村部(町や村)在住の外国人:22万1,691人 (6.0%)

このデータは、地方においても県庁所在地や地域の中心都市に外国人が集まり、そこから離れた町村では、さらに外国人材の確保が困難になっている実態を浮き彫りにしています。

なぜ外国人材は都市部を選ぶのか?3つの理由

なぜ、これほどまでに外国人材は都市部に惹きつけられるのでしょうか。その背景には、仕事、生活、コミュニティという3つの大きな要因があります。

圧倒的な求人数と高い給与水準

最大の動機は、やはり「仕事」です。多くの企業が本社や主要拠点を構える都市部は、求人の絶対数が地方とは比較になりません。専門知識を活かせる高度な職種から、製造業、建設業、サービス業まで、あらゆるスキルレベルやキャリア志向に応える多様な選択肢が存在します。

また、最低賃金をはじめとする給与水準も都市部の方が高い傾向にあり、より良い収入を得て母国の家族に仕送りをしたい、あるいは自身の生活を豊かにしたいと考える外国人にとって、都市部が魅力的に映るのは当然のことです。

生活の利便性と情報へのアクセス

来日したばかりの外国人にとって、言語や文化の壁は大きなストレスです。都市部では、役所や病院などで多言語対応が進んでいる場合が多く、生活をスムーズに立ち上げるためのハードルが低くなります。

また、交通網が発達しているため、車がなくても移動に困ることはありません。各国の食材を専門に扱うスーパーやレストラン、宗教施設(モスクや教会など)へのアクセスが良いことも、彼らが自分らしく生活する上で重要な要素です。

心の支えとなる外国人コミュニティの存在

異国の地で暮らす外国人にとって、言語や文化の壁は想像以上に高く、孤独や不安を感じる大きな要因となります。そのような状況で、同郷の出身者が集まるコミュニティは、かけがえのない「心の支え」として機能します。

そこでは母国語で気兼ねなく本音を話せ、仕事やビザの悩みから子育ての相談まで、幅広い事柄を共有できます。病院の選び方や故郷の食材が手に入る店といった実用的な情報交換も活発に行われ、日本での生活基盤をスムーズに築く手助けとなります。

国の政策は地方の追い風になるか?「育成就労」制度の展望

国も都市部への一極集中を課題と認識しており、新たな政策を打ち出しています。その柱となるのが、2027年度からスタートする新在留資格「育成就労」制度です。

技能実習制度からの変更点と企業の期待

「育成就労」は、これまで「国際貢献」を名目としつつも、実態としては安価な労働力の確保策として機能し、人権問題なども指摘されてきた技能実習制度を抜本的に見直すものです。

最大のポイントは、「育成」と「人材確保」を明確な目的とし、外国人労働者のキャリア形成を支援する点にあります。特に、同一業務分野内であれば、一定の要件(1年以上の就労など)を満たすことで本人の意思による転職が可能になる点は、大きな変化です。これにより、労働者の権利が守られ、より健全な労働市場が形成されることが期待されています。

懸念される「転職による都市部への人材流出」

しかし、この「転職の自由化」は、地方企業にとって大きなリスクをはらんでいます。地方の企業で技術や日本語を学び、ようやく一人前に育った人材が、より高い給与を求めて都市部の企業へと流出してしまう可能性が高まるからです。

政府は、大都市圏への過度な集中を防ぐための措置を講じるとしていますが、好条件の仕事を求める人の流れを完全に制御することは困難です。この制度変更により、企業間の人材獲得競争はさらに激化し、「いかに人材を惹きつけ、定着させるか」という企業の力量がこれまで以上に問われる時代になります。

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【実践編】地方企業が外国人採用を成功させる3つの戦略

では、都市部に人材が集中するという厳しい現実を踏まえ、地方企業はどのようにして外国人採用を成功させればよいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

都市部との違いを「魅力」として伝える

給与や利便性で劣る分、それ以外の付加価値を明確に言語化し、ターゲットに響く形で伝える必要があります。

経済的メリットを具体的に提示する

単純な月給の額面だけでなく、「可処分所得(自由に使えるお金)」の多さをアピールしましょう。

例えば

「東京での生活費は家賃だけで10万円かかりますが、私たちの地域なら同じ広さの部屋が4万円で借りられます。年間で72万円も自由に使えるお金が増えますよ」といったように、具体的なモデルケースを示して経済的なメリットを訴求します。

ワークライフバランスの実現を訴求する

満員電車での長い通勤時間がないことは、大きな魅力です。通勤時間が短い分、プライベートな時間が増え、日本語の勉強や趣味、家族との時間に充てられることを伝えましょう。

豊かな自然環境や、地域の人々との温かい交流も、都会の喧騒に疲れた人材には魅力的に映る可能性があります。

独自の技術や企業文化を言語化する

「この会社でしか学べない専門技術がある」「世界でトップシェアを誇るニッチな製品を作っている」「社長や役員との距離が近く、家族のような雰囲気でサポートが手厚い」など、自社ならではの強みを洗い出し、採用メッセージに盛り込みましょう。

定着を見据えた万全な受け入れ体制の構築

採用はゴールではなく、スタートです。特に、頼れる人が少ない地方においては、企業側の手厚いサポート体制が人材定着の生命線となります。

入社前・直後のオンボーディングを徹底する

内定から入社、そして業務に慣れるまでを一つのプロセスとして捉え、切れ目のないサポートを提供します。

入社前:オンラインでの定期的な面談、日本語学習のサポート、来日準備に関する情報提供。
来日直後:空港への出迎え、住居(社宅など)の準備、生活必需品の買い物同行、役所での住民登録、銀行口座開設、携帯電話契約などの手続き支援。
入社後:業務マニュアルの多言語化、OJTでの丁寧な指導、定期的な1on1面談の実施。

採用後のキャリアパスを明確に提示する

向上心のある優秀な人材ほど、「この会社で働き続けて、自分はどのように成長できるのか」という将来の展望を重視します。

スキルマップと評価制度の見える化

「どのスキルをどのレベルまで習得すれば、どの役職に就け、給与はいくらになるのか」といった成長の道筋を「スキルマップ」や明確な評価制度として可視化しましょう。

目標が明確になることで、日々の業務へのモチベーションが高まります。

正社員登用や管理職への道筋を示す

「育成就労」や「特定技能」といった在留資格だけでなく、その先にある正社員登用の可能性や、将来的にはチームリーダーや管理職として活躍できる道があることを示しましょう。

「単なる労働力」としてではなく、「将来の会社を共に担う仲間」として期待しているというメッセージが、彼らのエンゲージメントを大きく高めます。

まとめ:正しい現状認識が、外国人採用成功の第一歩

日本人の歴史的な減少外国人材の継続的な増加という大きな潮流は、今後も続きます。この変化の中で、外国人採用はもはや選択肢の一つではなく、多くの企業にとって不可欠な経営戦略となりつつあります。

地方には、都市部にはない確かな魅力があります。その魅力を言語化し、必要としている人材に的確に届け、そして温かく迎え入れる体制を整えること。地道ですが、これこそが厳しい採用市場を勝ち抜くための最も確実な道です。この記事が、貴社の採用戦略を前に進めるための一助となれば幸いです。

本記事で引用するデータは、総務省発表「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和7年1月1日現在)に基づいています。

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この記事の監修者

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キャリアアドバイザー
秦 秀斗

大学卒業後、経営コンサルティング会社に入社し、企業の経営支援に携わる。その後、dodaを運営するパーソルキャリアにて、様々な方の転職支援に従事。その経験を活かし、株式会社JINにて、人材事業を開始。

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