
令和8年(2026年)1月23日、政府は「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」を決定しました。
現在、日本に在留する外国人数は過去最高を更新し続けています。これに伴い、政府は「受け入れる数の拡大」から「秩序ある共生」へと大きく舵を切りました。具体的には、「ルールの遵守」と「厳格な管理」がキーワードとなります。
これまでのように「なんとなく採用して、現場に任せる」という体制では、今後、在留資格の更新が不許可になったり、企業側が指導不足を問われたりするリスクが高まります。
本記事では、今回発表された膨大な対応策の中から、企業の採用担当者・経営者が「今、知っておくべき変更点」と「講じるべき対策」を、実務レベルに落とし込んで解説します。
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2026年「総合的対応策」の概要
今回の対応策の根底にあるのは、「ルールを守る外国人は歓迎し、守らない場合は厳正に対処する」という明確なメッセージです。
背景には、外国人材の増加に伴い、税・社会保険の未納、不法就労、一部のルール逸脱行為に対する国民の不安が高まっていることがあります。政府はこれらを払拭し、「安全・安心な社会」と「共生」を両立させるため、以下の2つの軸を打ち出しました。
・既存ルールの徹底・厳格化:マイナンバー活用による納税状況の把握、永住許可・帰化の厳格化など。
・受入れ環境の整備:日本語教育の充実、生活オリエンテーションの強化など。
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在留管理と審査の厳格化
企業実務に最も直結するのが、在留審査の厳格化です。これまでは書類上の確認が主でしたが、今後はデジタル技術を活用した「実態の把握」が強化されます。

入管DXとマイナンバー活用
政府は、出入国在留管理庁(入管)と他省庁との情報連携を強力に推進します。
令和9年(2027年)3月以降、入管はマイナンバー等を活用し、以下の情報を関係機関から直接取得する仕組みを構築します。
- 税務情報:地方税等の課税・納税状況
- 社会保険情報:国民健康保険、国民年金等の納付状況
これまでは、本人が提出する納税証明書等で審査が行われていましたが、今後はデータ連携により未納や滞納が即座に判明します。「うっかり払い忘れていた」という理由でも、在留期間の更新が不許可になるリスクがあります。
人事担当者がすべきこと
外国籍従業員の住民税が特別徴収(給与天引き)になっているか再確認してください。普通徴収の場合、本人が納付を忘れているケースが多発しています。社会保険への適正な加入は、もはや必須条件です。
また、在留カードとマイナンバーカードの一体化(特定在留カード)も令和8年6月から運用が開始されます。将来的には、企業が従業員にマイナンバーカード取得を促すことが責務となる可能性も示唆されています。
永住権・帰化要件の見直し
「永住者」の資格を持っていれば安心、という時代も変わりつつあります。
永住許可後も、税や社会保険料を納めないなど、公的義務を履行しないケースが問題視されています。これに対し、改正入管法(令和9年4月施行予定)では、悪質な場合に永住者の在留資格を取り消すことができるようになります。
現在、帰化の居住要件は「5年以上」ですが、永住許可の「原則10年以上」と整合性が取れていないという指摘があります。今後、帰化申請においても「原則10年以上の在留」や「日本社会への融和」が厳格に審査される方向で検討が進んでいます。

JESTA導入と入国審査
令和10年度(2028年度)中に、日本版ESTAとも言える電子渡航認証制度(JESTA)が導入されます。
これは、短期滞在の外国人が来日する前に、オンラインで情報を申告させ、入国可否を事前審査する仕組みです。本来の目的は不法滞在の防止ですが、ビジネス目的の短期出張などでも手続きが必要になります。海外拠点からの出張者を受け入れる際は、スケジュールの管理に注意が必要です。
外国人雇用の制度変更点
特定の在留資格についても、審査基準や運用が見直されます。

育成就労制度の運用開始
技能実習制度に代わる新制度「育成就労」が、令和9年度(2027年)に向けて準備が進んでいます。令和8年度中には「施行日前申請」が始まる予定です。
- 日本語能力要件:一定の日本語能力(A1/A2相当)が要件化されます。
- 転籍(転職)の容認:一定期間(1〜2年)就労し、技能・日本語要件を満たせば、本人の意向での転籍が可能になります。
この制度変更により、企業には「人材の確保」と「育成」を両立させる姿勢が強く求められます。労働環境や待遇、教育体制が不十分な企業からは人材が流出する可能性が高まり、単に受け入れるだけの姿勢では安定した雇用は維持できません。
今後は、外国人材から「選ばれる企業」になるための職場環境整備や育成体制の構築が、これまで以上に重要となります。

「経営・管理」ビザの適正化
外国人が日本で会社経営を行うために必要な在留資格「経営・管理」ビザについて、今後は制度の趣旨に沿った運用を徹底するため、審査の適正化・厳格化が進められます。これは、単なる規制強化ではなく、「実体のある事業活動」を行う外国人経営者を適切に受け入れるための見直しと言えます。
これまでの制度運用では、バーチャルオフィスや実体のない事業所で法人登記を行い、実際には事業活動がほとんど行われていない、いわゆるペーパーカンパニーによる不正取得が疑われる事例が指摘されてきました。こうしたケースは、本来、日本経済への貢献を目的とする「経営・管理」ビザの制度趣旨と乖離しており、行政側も問題視している状況です。
今後は、事業実態の確認がこれまで以上に重視され、特に同一ビル内に小規模事務所が多数集中しているケースや、常駐者の有無が不明確な事業所については、慎重な審査が行われる見込みです。登記上の住所が存在するかどうかだけでなく、実際に人が働き、事業活動が行われているかといった点が重要な判断材料となります。
今回の適正化により、形式的な要件を満たすだけの経営では通用しなくなります。一方で、実体を伴う事業運営を行い、日本で継続的に価値を生み出している外国人経営者にとっては、むしろ制度の信頼性が高まると言えます。
留学生のアルバイト管理
留学生の資格外活動(アルバイト)は「週28時間以内」と定められていますが、掛け持ちなどでこれを超過するケースが後を絶ちません。
【今後の対策】
マイナンバー連携や雇用状況届出の活用により、複数の勤務先での労働時間が合算して把握されるようになります。

企業側の影響としても「他でもバイトしているとは知らなかった」という言い訳は通用しなくなります。留学生を採用する場合は、他社での就労状況を自己申告させるだけでなく、厳密なシフト管理が求められます。
超過が発覚すれば、本人のビザ更新ができなくなるだけでなく、企業側も不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

企業が取り組むべき支援
「厳格化」の一方で、今回の対応策では「外国人が日本社会に適応するための支援」の重要性も強調されています。これらは、行政だけでなく、受入れ機関である企業の役割としても明記されています。
日本語教育の環境整備
報告書では、「入国前」「入国後」を通じた日本語学習の重要性が説かれています。
今後、日本語や日本の制度・ルールを学習するプログラムの受講状況を、在留審査の考慮要素とすることが検討されています。つまり、「日本語を勉強しているか」がビザ更新に影響する可能性があります。
採用企業も単に現場でOJTを行うだけでなく、体系的な日本語学習の機会を提供することが推奨されます。
・オンライン日本語レッスンの導入
・就業時間内での学習時間の確保
・日本語能力試験(JLPT)の受験費用補助
これらは福利厚生ではなく、「定着支援」および「コンプライアンス対策」の一環として捉える必要があります。
適切な生活オリエンテーション
「日本のルールを知らなかった」ことによるトラブル(ゴミ出し、騒音、交通ルールなど)を防ぐため、オリエンテーションの実施が重視されています。
法務省は、生活オリエンテーション動画や「外国人生活支援ポータルサイト」を多言語で公開しています。これらを活用し、入社時に日本の生活ルールをしっかりと伝える時間を設けてください。
特に「自転車の交通ルール」や「社会保険の仕組み」はトラブルになりやすいため、丁寧に説明することが、従業員を守り、企業の評判を守ることにつながります。

今後の外国人採用の重要点
今回の「総合的対応策」を読み解くと、これからの外国人採用において企業が意識すべきポイントは以下の3点に集約されます。

「適正な管理」ができる体制づくり
マイナンバーによる情報連携が進む中、税や社会保険の手続きミスは致命的になります。人事・労務担当者は、外国人特有の手続きや期限管理について、最新の知識を持つ必要があります。
社内リソースだけで不安な場合は、専門家(行政書士や登録支援機関)との連携を強化してください。
「選ばれる企業」への脱皮
育成就労制度での転籍容認や、特定技能の拡大により、外国人材の流動性は高まります。「働かせてやっている」という意識の企業からは、優秀な人材が去っていきます。
給与水準の見直しはもちろん、キャリアパスの提示、日本語学習支援など、長く働きたくなる環境整備が採用競争力のカギとなります。
「地域との共生」への配慮
従業員が地域社会で孤立しないようサポートすることも企業の役割です。地域のお祭りに参加を促す、自治体の日本語教室を紹介するなど、地域社会との接点を作ることが、結果としてトラブル防止と定着率向上につながります。
外国人採用はお気軽にご相談ください。
まとめ:今すぐ自社の体制見直しを
2026年の「総合的対応策」は、日本の外国人受入れ政策が「拡大期」から「成熟・管理期」に入ったことを示しています。
ルールは厳しくなりますが、適切に対応すれば、優秀な外国人材は貴社の大きな戦力となり続けます。まずは、現在雇用している外国籍従業員の在留カード、社会保険加入状況、住民税の納付状況を確認することから始めてください。
リクアジでは、こうした法改正に対応した採用戦略や、定着支援のノウハウを持ったコンサルタントが、貴社の課題解決をサポートします。
「自社の管理体制に不備がないか心配」「新しい育成就労制度について詳しく聞きたい」という方は、ぜひ一度無料相談をご利用ください。
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