全国27自治体で「外国人1割」が現実に：企業が直視すべき採用の未来

日本社会における外国人材の存在感は、日々増しています。かつて国の研究機関は「2070年に外国人が総人口の10％を占める」と予測していましたが、最新のデータは、この「外国人1割社会」の到来が大幅に早まる可能性を示しています。

本記事では、外国人住民の比率が既に10%を超えている全国27の市区町村の実態を深掘りし、その背景にある深刻な人手不足の状況を解説します。また、外国人材を「会社の宝」として雇用し、成功を収めている中小企業の具体的な事例を通じて、初めて外国人採用を検討する人事・採用担当者や経営者の皆様が、今すぐ取り組むべき戦略と、地域社会との「共生」に向けた実践的なステップをわかりやすくお伝えします。

この記事を読むことで、時代の変化を先取りした採用戦略のヒントを得て、貴社の持続的な成長に向けた一歩を踏み出すことができるはずです。

全国27自治体で「外国人1割」が現実に

日本の労働環境と人口構造の変化は、私たち一人ひとりの生活だけでなく、企業の存続にも直結する喫緊の課題です。

リゾート地や工業地帯で急増する背景

外国人住民比率が1割を超えた27市区町村

住民基本台帳データを基に算出

市区町村名	比率（%）
1北海道 占冠村	36.6
2北海道 赤井川村	35.3
3大阪市 生野区	23.3
4群馬県 大泉町	21.3
5北海道 倶知安町	21.2
6北海道 留萌市	19.8
7北海道 ニセコ町	19.0
8長野県 白馬村	18.3
9大阪市 浪速区	16.6
10大阪市 西成区	14.4
11東京都 新宿区	13.6
12埼玉県 蕨市	12.5
13沖縄県 恩納村	12.4
14東京都 豊島区	12.3

市区町村名	比率（%）
15長野県 野沢温泉村	12.1
16横浜市 中区	12.0
17三重県 木曽岬町	11.8
18長野県 小谷村	11.3
19茨城県 常総市	11.3
20神奈川県 箱根町	11.3
21名古屋市 中区	10.9
22神戸市 中央区	10.7
23岐阜県 美濃加茂市	10.7
24愛知県 飛島村	10.6
25東京都 荒川区	10.6
26群馬県 草津町	10.5
27大阪市 中央区	10.4
全国平均	3.0

出典：共同通信（47NEWS）／住民基本台帳データ

2025年1月時点の住民基本台帳のデータに基づき、47NEWSが報じたところによると、全国1892市区町村のうち27自治体で、人口に占める外国人住民の比率が既に10％を超えていたことが判明しました。

これは、国の予測よりも遥かに速いスピードで「外国人1割社会」が進行している現実を物語っています。

これらの地域に共通するのは、働き手の確保が極めて困難であるという点です。日本の若者が都市部へ流出する中で、企業は生き残りのために、優秀な外国人材の力に頼らざるを得ない状況なのです。

企業の人事・採用担当者、経営者の皆様は、全国平均の統計だけでなく、こうした地域ごとの「現場の実態」を直視し、自社の採用エリアがどの段階にあるのかを把握することが重要です。

成功事例：中小企業の「宝」となる人材

外国人採用は、人手不足の「穴埋め」といった消極的な理由だけでなく、企業の生産性向上や活性化に繋がる積極的な戦略となり得ます。

採用担当者が知るべき現場の声

愛知県飛島村の「トビシマ製作所」の事例は、外国人材が企業にとって「貴重な戦力、宝」となり得ることを証明しています。

同社の社長が最初、人づてにベトナム人の「勤勉さ」を知り、2017年に受け入れを開始したのが始まりでした。一生懸命働く姿を見て、その後順次受け入れを増やしていきました。

成功のポイント：日本人との「格差」をなくす

トビシマ製作所の事例で特筆すべきは、待遇が日本人従業員とほとんど変わらない点です。

• 給与・ボーナス： 日本人従業員とほぼ同等
• 定着率： 約6年間働くベテランもおり、「できるなら日本でずっと働きたい」という高い意欲を持つ

「給料が安いから外国人を雇う」という考え方では、優秀な人材はすぐに離職してしまいます。むしろ、公平な評価と待遇を与えることで、彼らは企業にとって安定した中核戦力となるのです。

経済を支える外国人労働者の実態

外国人労働者は、日本で働く意欲が非常に高く、家族を支えるために来日しているケースも多くあります。トビシマ製作所で働くグエン・マイン・ハーさん（28）は、毎月12万～15万円を母国に残る家族に仕送りし、ご自身が使うのは2万～3万円ほどだと言います。

この高いモチベーションと「稼ぎたい」という明確な目的意識が、外国人材の高い定着率と生産性に繋がっていることを、採用担当者は理解しておく必要があります。

採用成功のカギは「生活・文化のサポート」

外国人採用の成功は、単に「雇用契約を結ぶこと」で終わりではありません。彼らが地域社会の一員として、安心して働ける環境を整えることが極めて重要です。

地域住民との摩擦を防ぐために

外国人住民の急増は、地域によっては「ゴミ出しのルール」「車のマナー」など、生活習慣の違いによる摩擦を生む原因にもなり得ます。一部の住民からは、「日本のルールを学ばない外国人が増えるのではないか」という不安の声も上がっています。

企業側が担うべき役割は、単なる職場の指導を超えた、「共生社会」の橋渡し役です。

企業が取り組むべきサポート項目	具体的な内容
初期オリエンテーション	ゴミの分別方法、騒音に関するルール、近隣住民への挨拶など、日本の生活習慣を丁寧に指導する。
多言語対応	地域の防災情報や緊急連絡先などを、彼らの母国語で提供する。
行政手続き支援	役所での手続き（住民登録など）や銀行口座の開設、病院の利用方法などをサポートする。
地域交流の促進	地域の祭りやイベントへの参加を促し、住民との自然な交流の場を設ける。

在留資格（日本に滞在し活動するための許可）のうち、特定技能の外国人材を受け入れる企業は、これらの生活支援を義務付けられています。

登録支援機関（外国人を受け入れる企業に代わって支援計画を実施する機関）と連携し、手厚いサポートを提供することが、外国人材の定着率向上に直結します。

人手不足解消へ、今すぐ動くべき理由

なぜ、外国人採用に今すぐ本格的に取り組む必要があるのでしょうか。それは、日本の人口動態が「現役世代の急減期」に突入しているからです。

予測を上回る外国人の増加ペース

国の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所（社人研）の最新の将来推計では、2070年の総人口は8700万人を割り込むとされています。外国人については、2070年に10％を超えるという予測でした。

しかし、足元の増加スピードは推計を大きく上回っています。

・実際の増加ペース： 2022年以降、前年比30万人以上のペースで増加し、2024年末時点では35万人増と過去最大の伸びを記録。
・政府見解： 外国人の割合が2040年頃には10％を超えることも想定すべき、という見解も出ており、社人研の推計より30年程度早まる可能性が指摘されています。

現役世代の急減期に「急場」は間に合わない

日本人の15歳～64歳の生産年齢人口は、2020年から2040年の20年間で約1500万人が減少するという、まさに「現役世代の急減期」にあります。

少子化対策やAI（人工知能）を活用した省力化への期待はありますが、これらの効果が出るには時間が必要です。向こう十数年で特に厳しくなる人手不足の「急場」に間に合わせるには、外国人材の受け入れは不可欠な対応策となります。

福井県立大の佐々井司教授（人口学）が語るように、「日本は既に外国人との共生なしには存続できない社会」なのです。外国人材が労働力として円滑に定着できる土壌を整備することは、日本社会全体にとって最大のメリットとなります。

まとめ：外国人採用は企業存続のための「未来投資」

外国人採用は、単なる人手不足への対策ではなく、企業の将来を左右する重要な「未来への投資」です。すでに一部地域では外国人住民が1割を超え、全国的にも増加スピードは想定を上回っています。成功の鍵は、外国人材を日本人と同等、あるいはそれ以上に大切な存在として迎え、公正な待遇と働きがいを提供することです。さらに、安心して働ける環境を整えるためには、生活や文化面での継続的なサポートが欠かせません。
「リクアジ」では、採用計画から在留資格の選定、入社後の生活支援まで一貫してサポートしています。まずはお気軽にご相談ください。