
「特定技能」外国人の採用を検討中、またはすでに雇用している企業の皆様。「特定技能」の在留資格を偽造の合格証で不正に取得したとして、ベトナム人男女が逮捕される事件が発生しました(10月24日 読売新聞オンライン報道)。
もし、自社で採用した人材が不正取得者だったら…。知らなかったでは済まされません。本記事では、事件の概要と、企業が外国人採用で巻き込まれないための注意点を専門家の視点でやさしく解説します。
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偽造の合格証で在留資格を不正に変更
読売新聞オンライン(10月24日配信)によると、大阪府警は23日、群馬県に住むベトナム国籍の会社員男女2名を、入管難民法違反(虚偽申請)の容疑で逮捕したと発表しました。
発表によると、1人は昨年3月、もう1人は昨年8月に、偽造した「日本語基礎テスト」や「飲食料品製造業」の技能試験の合格証明書を、東京出入国在留管理局(東京入管)に提出。

これにより、本来の在留資格であった「技能実習」から「特定技能」へ、不正に在留資格を変更する許可を得た疑いが持たれています。
簡単に言うと、「ウソの書類を提出して、日本に住むための許可(在留資格)をもらおうとすること」です。今回のケースでは、偽物の試験合格証を本物だと偽って提出したことが、この法律違反にあたります。
目的は在留期間の延長や収入増か
報道によれば、逮捕された2人はもともと「技能実習生」でした。
技能実習生は、原則として日本での在留期間が最長5年であり、転職も認められていません。 それに対し、「特定技能1号」の在留資格に変更できれば、さらに最長5年間の在留期間延長が可能になるうえ、同一分野内での転職も可能になります。
警察は、より多くの収入や在留期間の延長を目的に、不正に及んだとみています。 実際に2人は資格変更後、職場を変えて食品加工会社で働いていました。このことからも、転職の自由度や待遇改善が動機であった可能性がうかがえます。
替え玉受験も発覚、組織的な関与も?
今回の逮捕は、氷山の一角かもしれません。
府警は昨年12月以降、日本語基礎テストの会場で依頼者になりすまして受験する、いわゆる「替え玉受験」に関わったとして、ベトナム国籍の男女9人を逮捕しています。 この捜査の過程で、今回の「偽造合格証」を使った手口が発覚しました。
合格証を偽造した人物はまだ判明しておらず、警察は背後に組織的なブローカーが存在する可能性も視野に、捜査を進めている模様です。
なぜ「特定技能」の不正取得が起きたのか
同様の不正は、なぜ起きてしまうのでしょうか。その背景には、制度上の課題や、外国人労働者を取り巻く環境があります。
審査体制の問題点(専門家の指摘)
本来、こうした不正な申請は、入管の審査段階で見抜かれるべきです。
しかし、東京入管は読売新聞の取材に対し、「(偽造を)見抜けなかったことについて捜査中のため詳細は差し控える」とした上で、「出入国行政の根幹に関わることで看過できない。引き続き厳格な対応に努める」とコメントしています。
専門家からは、審査体制の限界を指摘する声も上がっています。
元入管職員の行政書士・木下洋一さんのコメント(要約)
「在留外国人の急増で審査件数も増え、入管当局が偽造を見抜くのは難しくなっている。(中略)不正が発覚した以上、試験の実施団体に確認するなどして、他にも同様の不正がないか調査する必要がある」
(出典:2025年10月24日 読売新聞オンライン)
このように、外国人労働者の急増に伴い、入管の審査業務が逼迫している実態がうかがえます。
SNSで偽造依頼が横行する実態
さらに、外国人労働者の問題に詳しい神戸大の斉藤善久准教授によると、SNS上では、日本語試験の合格証の偽造をベトナム語で依頼する投稿が複数確認されているとのことです。
資格が欲しい労働者と、それに応じる偽造ブローカーが、SNSを通じて容易に結びついてしまっている実態が浮き彫りになりました。
外国人採用で企業が注意すべき3つのチェックポイント
こうした状況下で、外国人採用を行う企業が「知らなかった」では済まされない事態を避けるため、採用担当者が最低限確認すべきポイントを3つにまとめます。
在留カードの原本確認と番号の照会
まず基本中の基本ですが、在留カードの原本を必ず目で見て確認してください。コピーや写真(画像データ)での確認は絶対にいけません。
- 顔写真(本人と一致しているか)
- 氏名、生年月日
- 在留資格(「特定技能」「技能実習」など)
- 在留期間満了日
- 就労制限の有無(「就労不可」となっていないか)
さらに、出入国在留管理庁が提供する「在留カード等番号失効情報照会」サイトで、そのカードが有効かどうかを必ず確認します。カード番号と有効期限を入力するだけで、そのカードが偽造・変造されたものでないか、失効していないかを即座にチェックできます。

採用ルート(紹介元)の透明性を確認
その候補者をどこで知りましたか?自社応募でしょうか、それとも人材紹介会社経由でしょうか。
紹介会社を利用する場合: 利用する人材紹介会社が、厚生労働省の「有料職業紹介事業許可」や、出入国在留管理庁の「登録支援機関」としての登録を正しく受けているかを確認します。許可番号などを確認し、信頼できるパートナーを選ぶことが、最大のリスクヘッジになります。
個人(リファラル)紹介の場合: すでに働いている在留外国人からの紹介(リファラル採用)は有効な手段ですが、その場合も審査は厳格に行う必要があります。紹介だからと安心せず、次のステップに進んでください。
試験の合格証を鵜呑みにしない
今回の事件のように、試験の合格証そのものが偽造されるケースがあります。採用担当者が書類だけを見て真偽を判断するのは非常に困難です。
- 面接での確認: 「日本語基礎テスト」や「日本語能力試験(JLPT)」の合格証を持っているにもかかわらず、面接での会話が著しく不自然な場合は注意が必要です。合格レベルと実際の会話能力に大きな乖離がないかを確認します。
- 専門家への相談: 書類に少しでも違和感を覚えたら、それ以上手続きを進めず、外国人採用に詳しい行政書士や、リクアジのような専門機関にご相談ください。

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もし不正採用してしまったら?企業が負うリスク
万が一、不正な在留資格とは知らずに雇用してしまった場合でも、企業が重い責任を問われる可能性があります。
「不法就労助長罪」に問われる可能性
それが「不法就労助長罪(ふほうしゅうろうじょちょうざい)」です。
これは、「不法就労(オーバーステイや、就労許可のない外国人を働かせること)」をさせたり、斡旋したりする行為を罰する法律です。

「偽造だとは知らなかった」としても、在留カードの確認を怠るなどの過失(うっかりミス)があったと判断されれば、処罰の対象となり得ます(3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金)。
企業の信用失墜と今後の採用活動への影響
法的な罰則以上に深刻なのが、企業の社会的信用の失墜です。「不正を許した会社」「コンプライアンス意識が低い」というレッテルは、取引先や消費者からの信頼を大きく損ないます。
また、一度でも不正に関与したとみなされると、その後の外国人採用におけるビザ審査(在留資格認定)が格段に厳しくなる可能性があります。採用活動全体に長期的な悪影響を及ぼすのです。
- 在留カードの原本を確認していますか?
- 出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」サイトを利用していますか?
- 人材紹介会社を利用する場合、許可番号を持つ信頼できる業者ですか?
これらの基本的な確認を怠ると、意図せず不正に加担してしまうリスクがあります。少しでも不安があれば、専門家にご相談ください。
まとめ:信頼できるパートナーと適正な外国人採用を
今回発覚した「特定技能」の合格証偽造事件は、外国人採用を検討するすべての企業にとって他人事ではありません。
審査体制の穴を突いた不正は、今後も形を変えて発生する可能性があります。 しかし、採用企業側が、
- 在留カードの原本確認
- 在留カード番号の失効照会
- 信頼できる採用ルート(紹介会社)の確保
といった基本を徹底することで、リスクの大半は回避できます。
外国人採用は、企業の成長に大きく貢献する可能性を秘めていますが、手続きの専門性やコンプライアンス(法令遵守)の観点から、自社だけですべてを完璧に進めるのは困難な場合もあります。
「手続きが複雑で不安だ」 「この候補者の書類は本物だろうか?」 「信頼できる紹介会社をどう探せばいいかわからない」
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