なぜ鳥取が急上昇？在留外国人が選ぶ“住みたい都道府県”ランキングに見る採用戦略のヒント

なぜ今、外国人材の定着が重要なのか？

出入国在留管理庁が2025年7月12日に発表した統計によると、令和6年6月末時点の在留外国人数は358万8,956人となり、過去最多を更新しました。コロナ禍からの回復に加え、労働、留学、定住など、さまざまな目的で日本に滞在する外国人が増え続けています。

国籍別では、中国、ベトナム、韓国、フィリピン、ブラジルが多いですが、「技術・人文知識・国際業務」といった専門スキルを持つ高度人材や、技能実習生、特定技能の在留資格を持つ方も増加しています。留学生も約37万人と前年より増えており、学業から日本での就職、さらには定住を希望する流れも顕著です。

このような状況で、企業にとって外国人材の採用は、労働力不足の解消だけでなく、新たな視点やイノベーションを取り入れる上で非常に重要になっています。さらに、採用後の定着を促すことは、企業の持続的な成長に直結します。

外国人が「住み続けたい」と感じる都道府県ランキングから見えてくること

株式会社グローバルパワーが運営する外国人向け求人サイト「NINJA」が発表した「外国人が継続して住みたいと思う都道府県ランキング2025年版」は、在留外国人の「定着したい」という意欲に注目した興味深い調査結果です。この調査は、NINJAのアクティブ登録者約5万名を対象に、「現在の住所に住み続けたい」と考える人の割合を都道府県別に集計しています。

ランキング上位の顔ぶれは以下の通りです。

これらの都市は、多くの外国人が暮らすだけでなく、インフラ、教育、行政サービスが充実しており、生活しやすい環境が整っていることが定着意欲を支える要因と考えられます。

例えば、東京都は全国最多の約70万人の外国人が居住し、多様な在留資格を持つ人々が集まっています。福岡県は在留外国人数で全国9位と都市規模に対して多く、コンパクトで生活しやすいと評価されています。

国際交流イベントや外国人起業支援も盛んで、「アジアの玄関口」としての魅力を高めています。大阪府も在留外国人数が大幅に増加しており、2025年の大阪・関西万博による観光需要増や、通訳・サービス職の求人増加が「住みたい」という意識につながったと分析されています。

鳥取県が20ランクアップ！地方で外国人に選ばれる「意外な理由」とは？

今回のランキングで特に注目すべきは、鳥取県が前年の30位から10位へと20ランクも順位を上げたことです。在留外国人数は全国で最も少ない約5,800人ですが、この大幅な上昇にはどのような背景があるのでしょうか。

その理由は、主に以下の3点に集約されます。

 多文化共生センターの整備: 外国人が地域に溶け込みやすいよう、相談窓口や交流の場を提供しています。
 外国人インターン受け入れの積極推進: IT企業や農業分野を中心に、外国人が実際に働き、地域に貢献できる機会を増やしています。
 行政による手厚い支援と地域とのつながり: 外国人が孤立せず、安心して暮らせるようなサポート体制が整っています。地域住民との交流も促進され、精神的な安定につながっています。

これらの取り組みにより、鳥取県は在留外国人数が少なくても、一人ひとりの外国人が「ここに住み続けたい」と感じる環境を作り出しているのです。

これは、企業が外国人採用を考える上で、「単に仕事を提供するだけでなく、生活環境全体をサポートすることの重要性」を示唆しています。

「生活」「雇用」「支援」の連動が定住のカギ

鳥取県以外にも、熊本県が前年21位から14位に上昇しました。これは、台湾の半導体大手TSMCの進出とその関連企業による求人増加が大きな要因です。専門性を持つ外国人が「仕事と生活の両方を確保できる」場所として熊本を選び始めている兆候が見られます。

一方で、島根県、高知県、徳島県はランキング下位に留まっています。これらの地域は在留外国人の数が少ないだけでなく、求人の選択肢も限定的であることが、定住意欲の維持を難しくしていると考えられます。仕事の選択肢が少ないと、どうしても転出や都市部への移動につながってしまいます。

今回のランキング結果から浮かび上がるのは、外国人が「住みたい」と感じる要因が、都市の規模や求人の数だけではないという点です。行政による支援、充実した生活インフラ、そして地域住民とのつながりといった「総合的なサポート体制」が、外国人材の定着に大きく影響していることが分かります。

特に、大学がある地域に外国人留学生が集まり、そのまま地元に定着する傾向も続いています。これは、教育機関が充実している都市ほど、「学ぶ→働く→住む」という自然な流れが形成されやすいことを示しています。

企業に求められる「ともに暮らす」視点

出入国在留管理庁の統計が示す通り、在留外国人は今後も増加傾向が続きます。企業が外国人材を「労働力」としてだけでなく、「ともに暮らす隣人」として受け入れる視点を持つことが、これからの外国人採用の成功には不可欠です。

具体的には、以下の点が企業に求められます。

・言語や文化への配慮: 異文化理解を深め、円滑なコミュニケーションをサポートする環境整備。
・生活支援の充実: 住居の確保、行政手続きのサポート、地域コミュニティへの参加促進など。
・キャリアパスの提示: 長期的に日本で活躍できるよう、スキルアップやキャリア形成の機会を提供。
・ハラスメント防止と相談窓口の設置: 外国人従業員が安心して働ける環境を整備。

これらの取り組みは、外国人材の定着率向上だけでなく、企業の多様性を推進し、組織全体の活性化にもつながります。

まとめ：外国人採用は「定着」まで見据えた戦略を

今回の「外国人が住みたい都道府県ランキング」は、在留外国人の増加という大きな流れの中で、彼らが何を重視して居住地を選ぶのかを教えてくれます。単に求人を出すだけでなく、生活環境全体をサポートし、地域と企業が連携して「ともに暮らす」環境を整えることが、これからの外国人採用を成功させる鍵です。

外国人材は、日本社会、そして貴社にとってかけがえのない存在となります。彼らが日本で安心して働き、暮らし続けられるよう、貴社も「選ばれる企業」を目指しませんか？