
「外国人採用」は、もはや一部のグローバル企業だけのものではなく、日本全体の重要な経営戦略となっています。2025年9月11日にロイターが発表した企業調査では、実に全体の約8割もの企業が外国人を雇用している実態が明らかになりました。
この記事では、この最新調査の結果を基に、
企業は外国人材に何を期待しているのか?
今後の採用市場はどうなっていくのか?
といった採用担当者様が今知りたい情報を、企業のリアルな声と共に詳しく解説していきます。
本調査(※)では、回答企業238社のうち79%が「外国人を雇用している」と回答。外国人採用が日本のビジネスシーンで「当たり前」になっている現状が浮き彫りになりました。
※調査概要:
2025年8月27日~9月5日実施、資本金10億円以上の上場・非上場企業497社中238社が回答(出典:ロイター)
8割の企業が雇用、採用は「特別」ではない時代に
調査結果で最も注目すべきは、回答企業の79%が既に外国人を雇用しているという事実です。これは、外国人採用が特別な取り組みではなく、多くの企業にとって人材確保のためのスタンダードな選択肢となっていることを示しています。
雇用割合を見ると、「全従業員の5%未満」が66%と大半を占めており、多くの企業がまずは少数から受け入れ、着実に実績を積んでいる様子がうかがえます。一方で、「10%以上」と回答した企業も5%存在し、外国人材が組織の中核を担っているケースも増えています。

企業はなぜ外国人を採用するのか?3つの主な理由
では、具体的な採用理由は何なのでしょうか。調査からは、単なる労働力不足の解消だけではない、企業の戦略的な意図が見えてきます。

1. 最も多い理由は「人手不足」への対応 (55%)
やはり最大の理由は、日本の多くの企業が直面する「人手不足」でした。回答企業の半数以上がこの項目を挙げており、少子高齢化による生産年齢人口の減少という構造的な課題に対し、国籍を問わず人材を確保しようとする企業の姿勢が明確に表れています。
国内の採用市場だけでは、事業維持や成長に必要な人材を確保しきれないという現実が背景にあります。
2. 企業の成長を加速させる「専門性」と「グローバル化」
注目すべきは、2位以下の理由です。
・海外事業の強化:39%
・専門知識や技術の確保:30%
これらの数値は、企業が外国人材を「守り」のためだけでなく、事業成長を促す「攻め」の戦略として捉えていることを示しています。海外市場への展開、新たな技術開発、イノベーションの創出など、日本人だけでは得られないスキルや視点を積極的に取り込もうという意図が読み取れます。
一方で、「人件費の抑制」を理由に挙げた企業はわずか6%でした。このことからも、外国人採用が「安価な労働力の確保」という段階から、「企業の未来を担う人材の獲得」へと大きくシフトしていることが分かります。
調査からは「特に外国人だからということで雇用する理由はなく、日本人と同列で採用の選定を行っている」(運輸)、「多様な価値観を持つ人財を確保するため」(鉄道)といった声が寄せられています。国籍というフィルターを外し、一人の優秀な個人として採用するという考え方が、先進的な企業の間でスタンダードになりつつあります。
規制強化には77%が反対。企業の採用意欲は揺るがない
政治的な議論が採用活動に与える影響についても調査されています。企業の現場では、外国人材の受け入れを合理的かつ必要不可欠なものとして捉えていることが分かりました。
なぜ規制強化に反対の声が多いのか?
外国人受け入れ規制の強化について尋ねたところ、77%もの企業が「強化すべきでない」と回答しました。
・「人手不足・国内消費等を考えると人口減スピードを遅らせる外国人受け入れは必要不可欠」(卸売)
・「経営の前提としての労働力総量の確保のために、十分な外国人の受け入れは必要である」(機械)
といった声が上がっており、多くの企業が日本のマクロ経済的な視点から、外国人材の必要性を強く認識していることがうかがえます。
一方で、「強化すべき」と回答した企業も23%存在し、「社会不安につながっている」「現行の法制度の抜け穴をなくすべき」といった意見も寄せられました。これは、受け入れにあたってのルール整備や社会的なコンセンサス形成が、今後のさらなる課題であることを示唆しています。
政治的な動向に左右されない、企業の合理的な判断
また、「7月の参院選での議論が、外国人採用に対する姿勢に変化を与えたか」という問いには、96%が「変化ない」と回答しています。
「参院選の議論は企業視点の合理的な判断とは切り離されて考えられるもの」(機械)というコメントにもあるように、企業の採用活動は、一過性の政治的な議論よりも、自社の事業戦略や日本の労働市場の現状に基づいた、長期的かつ合理的な判断によって動いていることが明確になりました。
これから外国人採用を始める担当者が押さえるべきこと
今回の調査結果は、これから外国人採用を検討する企業にとって、多くのヒントを与えてくれます。
採用成功のための3つのポイント
-
自社の採用目的を明確にする
誰を・なぜ・いつまでに採りたいのかを一文で言語化し、評価基準と選考導線まで整える。
-
受け入れ体制という「課題」に備える
オンボーディング担当・初月KPI・教育計画・ツール権限の事前準備で離脱を防止。
-
専門家の知見を活用する
母集団形成/スカウト文面/選考設計は外部知見を取り入れてスピードと質を両立。
まず、調査結果にあったように「なぜ、自社は外国人採用を行うのか」という目的を明確にしましょう。「人手不足解消」「専門性確保」「グローバル化」など、目的が明確であればあるほど、採用すべき人材像や、その後の受け入れ計画も具体化します。
次に、規制強化賛成派の意見にもあったような「社会的な課題」を、自社の「受け入れ体制」の課題として捉え、備えることが重要です。言語の壁、文化の違い、複雑な法的手続きなど、事前に起こりうる問題を想定し、社内でのサポート体制やルールを整備しておくことが、スムーズな受け入れと定着の鍵となります。

そして、これらの専門的なノウハウや手続きに不安がある場合は、無理に自社だけで抱え込まず、専門知識を持つエージェントや外部機関と連携することも有効な手段です。
まとめ:外国人採用は、企業の未来を創る重要な一手
今回のロイター企業調査から見えてきたのは、外国人採用がもはや特別な選択肢ではなく、多くの企業にとって事業を維持・成長させるために不可欠な戦略であるという現実でした。
採用理由は多様化し、その姿勢は政治的な動向にも左右されないほど確固たるものになっています。
これからの採用担当者には、国籍という枠を超え、いかにして自社の未来に貢献してくれる優秀な人材を見つけ、活躍してもらうかというグローバルな視点がますます求められていくでしょう。