
「2030年には、日本の荷物の3割以上が運べなくなるかもしれない」そんな衝撃的な予測があるほど、物流業界のドライバー不足は深刻です。多くの企業が解決策として外国人採用に注目していますが、「言語の壁が心配」「定着してくれるか不安」といったデメリットを懸念する声も少なくありません。
しかし、その常識を覆す新たな採用戦略がカンボジアで始まっています。この記事では、即戦力となる外国人ドライバーを育成し、採用を成功に導くための具体的なノウハウを解説します。
・ドライバー不足という日本の物流業界が抱える深刻な課題
・なぜカンボジア人材がドライバーとして注目されているのか
・採用の具体的な流れとノウハウ
はじめに:物流の2024年問題と深刻化するドライバー不足
日本の物流業界は今、待ったなしの状況に置かれています。その象徴が「物流の2024年問題」です。働き方改革関連法により、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働に年間960時間の上限が設けられました。労働環境の改善は急務ですが、一方で一人あたりの労働時間が減ることで、輸送能力の低下が懸念されています。
この問題の根底にあるのが、慢性的なドライバー不足です。
トラックドライバーの有効求人倍率は常に高い水準で推移しており、全産業の平均と比べても約2倍という状況が続いています。少子高齢化が進む日本では、若手の担い手確保はますます困難になっています。

外国人採用のメリットとデメリット
外国人採用を検討するにあたり、まずはメリットとデメリットを正しく理解することが重要です。

メリット:若手人材の確保と組織活性化
最大のメリットは、何と言っても若く意欲的な人材を確保できる点です。特に、日本で働きたいという強い目的意識を持った人材は、学習意欲が高く、仕事にも真摯に取り組む傾向があります。

また、異なる文化背景を持つ人材が加わることで、組織内に新しい視点や価値観がもたらされ、社内の活性化に繋がるという副次的な効果も期待できます。日本人社員にとっても、異文化に触れる良い刺激となるでしょう。
デメリット:言語・文化の壁と手続きの複雑さ
一方で、多くの企業が懸念するのがデメリットの部分です。
・言語の壁:お客様への対面納品や、緊急時の電話連絡などの場面で課題が生じやすいです。指示の誤解が、思わぬトラブルに繋がる可能性もあります。
・文化・習慣の違い:「時間厳守」の感覚や「報告・連絡・相談」といった日本のビジネス文化に慣れるまで、時間がかかる場合があります。
・手続きの複雑さ:在留資格(ビザ)の申請や更新、住居の確保など、採用企業側が対応すべき手続きは多岐にわたります。担当者の負担が大きくなることも少なくありません。
これらのデメリットを乗り越えるには、事前の準備と採用後のきめ細やかなサポートが不可欠です。
【注目】新たな解決策としてのカンボジア人材
こうした課題を解決する画期的な取り組みとして、今「カンボジア」での人材育成が注目を集めています。福岡県で外国人ドライバーの支援会社を立ち上げた小林良介社長は、カンボジア人材のポテンシャルにいち早く着目しました。

なぜカンボジア?日本との意外な共通点
「なぜ、数ある国の中からカンボジアなのでしょうか?」その答えは、日本との意外な共通点にありました。
小林社長によると、「カンボジアの道路交通法は、日本政府のODA(政府開発援助)による支援で作られた背景があり、非常に似ている」とのことです。基本的な交通ルールや道路標識の概念が日本と近いため、カンボジア人は日本の交通環境にスムーズに適応できる素地を持っているのです。
また、カンボジアは国民の平均年齢が若く、経済発展への意欲が高い国です。親日的な国民性も知られており、日本で技術を学び、家族を支えたいと考える勤勉な若者が多くいます。
現地で実施される「日本式」教育の徹底ぶり
この親和性を最大限に活かすため、小林社長は8年前に首都プノンペンに自動車学校を設立。ここでは、単なる運転技術だけでなく、日本で即戦力となるための徹底した「日本式」教育が行われています。
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徹底した日本語教育 日常会話に加え、業務で使う専門用語やロールプレイ(お客様対応)まで実践的に習得します。
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特定技能の学科試験対策 日本の法令や業界知識を体系化し、在留資格取得までを見据えたカリキュラムでサポートします。
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日本の交通法規・マナー指導 一時停止・安全確認など日本特有の厳格基準を反復トレーニングで定着させます。
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安全運転への意識付け 「これくらい大丈夫」を無くすため、ヒヤリハットの共有と振り返りを継続し、事故ゼロを目指します。
出典:テレビ朝日系(ANN)2025年9月16日放送「グッド!モーニング」
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採用成功のプロセス:育成から免許取得までの完全ガイド
では、実際にカンボジアで育成された人材は、どのようなプロセスを経て日本でドライバーとしてデビューするのでしょうか。その具体的な道のりを追ってみましょう。
STEP1:現地での厳格な選抜と日本語教育
すべてはカンボジアでの選抜から始まります。日本で働くという強い意志と適性を持った人材が選ばれ、自動車学校に入校。数ヶ月にわたり、前述の「日本式」教育を受けます。
この段階で、日本語能力、運転技術、そして何よりもプロドライバーとしての心構えが養われます。
STEP2:来日後の生活基盤サポート
厳しい選抜をクリアした人材は、いよいよ来日します。しかし、ここからが本当のスタートです。彼らが仕事に集中するためには、まず日本の生活に慣れなければなりません。
実際に来日したホール・ヴィリャックさん(37)とスン・キゴウンさん(27)のケースを見てみましょう。
彼らは支援会社のサポートを受けながら、
・住居の契約
・スーパーやコンビニでの買い物の仕方
・銀行口座の開設

など、生活に必要な一つひとつを学んでいきます。こうした公私にわたる伴走型の支援が、彼らの不安を和らげ、日本社会へのスムーズな適応を促すのです。
STEP3:最難関?日本の運転免許取得への挑戦
生活に慣れると同時に、最大の関門である日本の運転免許取得が待っています。たとえ母国で豊富な運転経験があっても、日本で事業用の自動車を運転するには、日本の免許が必須です。

ヴィリャックさんとキゴウンさんは、約1ヶ月間、日本の教習所で大型免許取得のための実技訓練に励みました。大型車特有の内輪差や車幅感覚に苦戦しながらも、何度も窓から顔を出して安全確認する姿は真剣そのものです。
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採用企業が今から準備すべき3つのこと
カンボジアでの取り組みは、外国人採用を成功させるための多くのヒントを与えてくれます。これから外国人採用を検討する企業は、どのような準備をすべきでしょうか。
①受け入れ体制の構築と業務マニュアルの整備
まず、社内の受け入れ体制を整えることが重要です。
・業務マニュアルの多言語化・図解化:日本語が不得意な人材でも理解できるよう、写真やイラストを多用した分かりやすいマニュアルを作成します。
・メンター制度の導入:仕事のことから生活の悩みまで、気軽に相談できる日本人社員を指導役(メンター)として配置することで、早期離職の防止に繋がります。
②既存社員とのコミュニケーション促進
外国人材が孤立しないよう、社内でのコミュニケーションを促進する工夫も大切です。
・異文化理解研修の実施:受け入れる側の日本人社員が、相手の国の文化や習慣を学ぶ機会を設けます。相互理解が、円滑な人間関係の土台となります。
・社内イベントの開催:歓迎会や懇親会などを通じて、業務外での交流の場を作ることも有効です。

③信頼できる支援機関との連携
ビザの手続きや生活サポートなど、自社だけですべてを担うのは大きな負担です。今回のカンボジアの事例のように、人材の育成から来日後のサポートまでを一貫して行える、信頼できる支援機関や登録支援機関と連携することが、採用成功への近道です。

まとめ:外国人採用は企業の未来を拓く戦略的投資
深刻なドライバー不足に直面する物流業界にとって、外国人採用はもはや選択肢の一つではなく、事業を継続するための重要な経営戦略です。
ヴィリャックさんとキゴウンさんは、すでに来日中に熊本県の運送会社から内定を得ています。残る資格試験に合格すれば、来月から現場でハンドルを握り、日本の物流を支える一員となります。
彼らのように、日本で活躍したいと願う外国人と、人手不足に悩む日本企業。この両者を繋ぐ取り組みは、日本の物流業界の未来を、ひいては私たちの生活を明るく照らす一筋の光となるはずです。
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